初めまして。
『夢酔独言』のマンガを描いている者です。
私が『夢酔独言』をマンガ化し、発表しようと思うに至ったいきさつを書きます。
私が勝小吉のことを知ったのは、2010年ぐらいのこと。
NHKの「歴史秘話ヒストリア」で、江戸時代の奇人・変人特集の1コーナーで紹介されていました。
家出したときお世話になった漁師の家から金を盗んで逃げたとか、24歳の時隠居して、まだ3歳の息子に跡を継がせようとしたとかいったエピソードでした。
当時私は「昔の人はみんな偉かった」というのを信じていましたので、そんなダメな人(しかも武士で)がいたことが衝撃的でした。
でも同時に、なんだかほっとしたのを覚えています。世の中の懐の深さというか…。
それから5年ほど経ってから、勝小吉が書いた『夢酔独言』という自伝を読んでみようと思い立ち、中古の文庫本を買って読みました。
…ぇえー、なんか衝撃(2回目)。
それまで教科書で『枕草子』とか『徒然草』しか読んだことがなかったので、そんな感じのものを想像していたんですが…。
ふつうに読めるんですよね。教科書に載っているような古典文学は、解読するのに労力をつかって、理解までなかなかいかないのですが。
読み味は夏目漱石の『坊っちゃん』に近いです。時代もまあまあ近いし。
内容も面白くて、子孫へのいましめで書いたものとは思えないくらいでした。
一番衝撃だったのは、「おれが思うには」という記述があること。そんな概念が、170年前の文章にあるのが信じられませんでした。「おれが思う」と思う人は、もはや歴史上の記号ではなくなって、私と同じ人間に思えるんです。170年前に生きながら。
本を読んだのは確か金曜日で、土曜日にはマンガを書き始めました。
続きます。