勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』三話目です。
小吉が7歳の時の話です。
男谷家から勝家に養子に行くことになった小吉。しかし、養子に入るには、元服の年齢に達していないといけません。そこで男谷家は、7歳の小吉を17歳に偽装することにします。
原作『夢酔独言』の該当箇所はこちら(はやおきによる現代仮名遣いで引用)。
おれが七つの時、今の家へ養子に来たが、その時十七歳と言って、芥子坊主の前髪(ケシの実のように束にして結んだ前髪)を落として、養家の方で小普請組支配石川右近将監と組頭の小尾大七郎に、初めて判元の時であったが、その時は小吉と言ったが、頭が、
「年はいくつ。名は何という」
と聞きおった故、
「小吉。年は当十七歳」
と言ったら、石川が大きな口を開いて、
「十七には老けた」
とて笑いおった。その時は青木甚平という大御番、養父の兄貴が取り持ちをしたよ。
おれが名は亀松という。養子に行って小吉となった。それから養家には祖母が一人、孫娘が一人。両親は死んだ後で、残らず深川へ引き取り、親父が世話をしたが、おれは何にも知らずに遊んでばかりいた。
末期養子については、マンガの解説にある通りです。
小吉(男谷家)は頭(上司)を騙しているわけですが、判元見届けという、いわゆる身元確認の段取りは江戸後期には形骸化していたようで、上司の石川様も歳をごまかしていることに対して、冗談を言って返します。
「年はいくつ。名は何という」
と聞きおった故、
「小吉。年は当十七歳」
と言ったら、石川が大きな口を開いて、
「十七には老けた」
とて笑いおった。
このくだりで逆さ屏風が登場しますが、これは人が死んだことを表します。
許嫁のお信はこの時5歳。お姑さんは、信の実の祖母です。
小吉は男谷家から勝家に養子入りしましたが、
養家には祖母が一人、孫娘が一人。両親は死んだ後で、残らず深川へ引き取り、親父が世話をしたが、…
とあるように、実態は、信とお姑さんを男谷家で引き受け、小吉は今まで通り暮らしたようです。
後半の、お姑さん登場のくだりはフィクションです。
※このお姑さんは、勝小吉を描いた物語ではおおむね「常識外れな小吉をしつけるために厳しくしている常識人」という解釈で描かれるのですが、マンガ『夢酔独言』では、原作者小吉目線で、ストレートに意地悪婆あとして描かれます。
ドラマ『小吉の女房』にも登場した(※正確には、獅子舞の動きを模した踊りの「ずぼんぼえ」)でお馴染みの江戸玩具「ずぼんぼ」をどこかで登場させたかったので、32ページで小吉に持たせました。
ずぼんぼは、紙で作った獅子舞人形の四肢にシジミを張り付け、あおいで動かすおもちゃです。
※27ページの「勘定支配」は、「支配勘定」が正しいです。人にセリフ入力してもらったので、製本する際直します。とゆーか、調べ直したら、甚三郎さん(勝家の前当主)は無役だったようです。
四話「初めての切腹」に続きます。
またまた凧喧嘩をして、今度は劣勢になる小吉。もはやこれまで…四話目にして、主人公切腹の危機!
お楽しみに!