『夢酔独言』 百十五話 町奉行はおれの相弟子
江戸の地主のために、大坂の知行所まで来て、村に大金を要求する夢酔(小吉)一行。しかし村人が反発して、竹槍で旅宿を囲まれる騒動まで起きます。
小吉は村人を大人しくさせるため、大坂の町奉行の権威を借りることに。しかし、小吉と町奉行は、知り合いでも何でもありません。どうする…?
だんだん日数も経つから、大坂の堀伊賀守が用人・下山弥右衛門の所へ行って内談した。こいつは元よりおれが江戸で世話をした男で、孫一郎の家の事情もよく知っていた。
村方へ帰ったらば、代官が
「大坂の、どなたの所へ行きなさった」
と聞くから、
「町奉行の、堀伊賀守の所さ。あれは元々、おれとは相弟子だったから」と答えたら、
「それは」と恐れ入ったようだった。
二、三日後、大坂より大勢の供の者が村に来て、伊賀守の口上を述べて、酒肴のお重やいろいろの物を贈って寄越した。村中がそれを見て肝をつぶし、「夢酔様はお奉行様とご懇意だ」と抜かして、それから竹槍や取り巻きを止めたが、おかしくってならなかった。
贈り物を代官の親類へやり、肴は村役の者へ分けてやったが、村中で
「お奉行様のお肴だ」
と言って、ありがたがって食ったとよ。
※原作よりはやおき訳で引用
小吉は大坂の知り合いを訪ね、その人(下山弥右衛門さん)が町奉行の部下であることと、江戸の事情を知っていることを利用します。
下山さんに相談して、町奉行からの手紙と贈り物を村に届けて村人たちを驚かせますが、全て小吉の仕込み(ヤラセ)です。村の代官・山田新右衛門さんにも「町奉行と相弟子だった」と言っていますが、これも嘘です。
「夢酔様は町奉行と仲良し(大嘘)」キャンペーンは見事成功し、村人は竹槍で小吉一行の旅宿を取り巻くのをやめたのでした。
ただ、村にはまだ反対勢力が残っています。
百十六話「夢酔、雨を降らせる」に続きます。
村の悪輩ばかり連れて、能勢妙見へ参詣に出た小吉。小吉の計画は、雨降りを予言して、悪輩達をへこませること。果たして成功するのか!?