マンガで読める『夢酔独言』

マンガで読める『夢酔独言』

勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 百十九話 切腹

『夢酔独言』 百十九話 切腹

  

 マンガ本編があと約10話あるのに、主人公が切腹するようです。

 

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 小吉はひと月前から岡野孫一郎(小吉にとっては地主、村にとっては地頭=領主)の家来として大坂の御願塚村へ来て、「村の領主のために金を出せ!」と訴えてきました。しかし、ついに江戸での支払期限が迫り、窮地に追い込まれます。

 

  前回、村方総出の宴会の後、白装束に着替えて再登場し、村人たちの度肝を抜いた夢酔(=小吉)。

 こんなことを言い出します。

 

「岡野孫一郎はただでさえ借金が多いから、お主たちが迷惑に思うのも無理はねえ。だがお主たちは岡野江雪(岡野家の先祖)以来この土地に住んで、代々の地頭の恩を忘れてはいめえか。その地頭の家名に関わるほどの事を見捨てるとは、畜生にも劣るとおれは思うぞ。だからお主たちに相談したのだ。

 千両や二千両の金は、おれが大坂の奉行へ頼んだら、今すぐ出来る金なんだ。だが、それでは江雪斎より知行所を拝領した甲斐がねえじゃねえか。だいいち、先祖に対して不孝だぜ。

 家を立てるのに、知行村が従わないから他で借りて済ませたと世間に知られては、仲間へ顔向けもできねえよ。そこでお主たちに地頭への忠義心を示させて、主従関係を安泰にさせたかったのさ。そうすれば、世間のそしりも抜けるだろうよ。

 だが、どうにも金は出せぬようだから、おれの志は無駄になっちまった。何も出来ないまま江戸へは帰れねえから、今晩おれは自殺して、江戸へ申し訳を立てよう。

 代官、村役人へ頼むは、おれの亡骸をば江戸の息子に渡してくれろ。相談して、何人か付き添ってくれ。

 ※原作よりはやおき訳で引用

 

 ここで小吉は、

 

・地頭のために金を出さないなんて、恩知らずめ!

・おれの権力ですぐに大金は捻出できるけど、お前達に忠義心を示すチャンスをやったんだ!それなのにフイにした!

・お前達が金を出さないせいで、おれは自殺する!

 

と、自分たちの都合で村に来て大金を要求しておいて、さも村方に責任があるかのような理屈を展開します。

 ちなみに、原作で小吉は「千両や二千両の金はおれが大坂の奉行へ頼んだら、ただ今すぐにできるは知っている」と言っていますが、真っ赤な嘘です。小吉にそんなツテはありません。

 

 

 

 時服を脱いで広蓋(ひろぶた、格式の高いお盆)へ載せて、喜三郎へおれが刀を渡して、

「これで介錯しろ」

と言い付けた。(※ネタバレになるため中略)村方一同へ向けて、

「頼んだこと、よくよく心得ろ」

と言いつつ、脇差を抜いて、布きれで巻き、

「一同許すから、顔を上げて、夢酔が自殺をよくよく見ておけ」

と言って、脇差を取り直す。

 一同が、

「恐れながら御免、御免」

と言って、布団のそばへ這い寄ったが、おれが喜三郎に

「早く打て」

と言ったら、喜三郎はひれ伏している。おれが

「己には頼まぬ」

と言うと、是非なく立って、後ろへまわった。

 

 上のくだりは、主語や言い回しを少し直しただけで、原作とほぼ変わらない文章になっています。臨場感のある、良い文章じゃないですか?この文章を書いたのは、ほかならぬ夢酔(=小吉)なわけですが…。

 ちなみに、脇差を抜いて布きれで巻いて」とは、ちゃんと腹を切れるように、脇差を握った手を上から巻いて固定することを言っています。

 

 

 

 百二十話初めからそのつもりさ」に続きます。 

 

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