『夢酔独言』 百十四話 夢酔一行、竹槍百姓に取り巻かれる
摂州(大阪、兵庫辺り)の御願塚村へ、地主のために339両用立ててもらいに来た夢酔(勝小吉)。
金を出し渋る村方に、小吉の供の一人・猪山勇八郎が独自に交渉しますが、反発した百姓たちが、竹槍を手に小吉の宿を取り囲みます。
「上坂編」のこのあたりから、原作もやっと、読んで面白くなります。
江戸からはるばる大坂まで、お金を取りに御願塚村までやって来た夢酔一行(夢酔、猪山勇八郎、堀田喜三郎、その他2名)。
前回勇八さんが裏ルートで村の偉い人達と交渉しようとしたところ、裏目に出て、皆さんに竹槍で囲まれる事態になりました。
江戸より連れてきた猪山勇八という男が、内々に金子のことを強談した。すると村方が騒ぎたて、毎日毎日集まって相談し始めた。
ある時、おれが泊っている宿を村の者どもが取り巻いて、あれこれ雑言を抜かしおる。竹槍まで持ち出したから、供の者は怖がり、「江戸へ帰りましょう」と言うから、叱ってやった。
それから毎日毎日、村の者が寺へ集まり、鐘をついては、旅宿へ押し寄せた。みんな猪山が馬鹿なことを言いふらしたからだ。
※原作よりはやおき訳で引用
武士相手に暴動起こして打ち首とかにならないの?と思いますが、結論から言うと、なりませんでした。武士の方は村からの年貢や人手やお金を必要としていますし、大金を要求する側の小吉も、村から反発があるのは百も承知で、これまでじわじわと交渉の外堀を埋めていました。それが台無しになったので、小吉は村人にではなく、早まった勇八さんに怒っています。
と、いうことがありつつも、小吉は外堀作戦を続行します。紋付の服で村を歩き回ったり(マンガでは葵の紋にしましたが、単に自分の家の紋付かもしれません)、村の代官一家に本を読んであげたり。
そんな中、小吉は皮癬(ひぜん、皮膚病の一種で疥癬虫が原因、すごくかゆい)にかかり、伊丹の温泉に出かけます。観光か!
こういうしょーもないことも書いてあるのが、リアルです。ただし抜け目のない小吉は、自分が温泉に行って留守の間、村に間者(かんじゃ=スパイ)を紛れ込ませて、容子を探ります。
今に百姓どもに泡を吹かして、金を出させてやろうと思っているから、逗留中は何にも余計なことは言わず、慎んでいた。
そのうち、おれは皮癬になって困ったから、毎日毎日伊丹の小山湯に入りに行った。村に間者を置いて様子を探っていたが、いろいろ村方の者が悪だくみをするという。おれは何にも知らぬ顔でいた。
百十五話「町奉行はおれの相弟子」に続きます。小吉が村人を大人しくさせます。