『夢酔独言』 百二十五話 夢酔ストレスフル
39歳の春、他行留(たぎょうどめ=外出禁止)を言い渡された小吉。夏になり、不満とワガママが爆発します。
小吉が39歳の年(天保十一年、西暦1840)、兄の男谷彦四郎が死んだというのは、『夢酔独言』には書かれていませんが、他の資料によります。彦四郎さんは小吉より25歳年上なので、享年64歳でした。
九月になって、友達が頭(かしら)へ、遠出したことについて、摂州への旅行はまったく夢酔(=小吉)が慰め(楽しみ)のためではなかったとて、岡野孫一郎騒動のあらましを言い上げてくれた。
すると頭が、
「それは余儀なきことだ。関所を越したのは不埒だが、もはやよく慎んだ。他行をしろ」
と言い渡した。
久しく家へ閉じこもったから、あちこちへ飛び歩いた。
※原作よりはやおき訳で引用
原作の該当箇所は以上です。
小吉のわがまま放題ぶりはフィクション演出でした。
妻・信がスイカを持ってくる場面がありますが、その時のコマがこちら。
スイカが皮をむいて角切りにしてありますが、浮世絵で、よくこういう切り方をしています。オーソドックスな半月状に切ったものもあります。
器の模様は「氷裂(ひょうれつ)」模様。冬に張っていた氷が、春になってひび割れる様子を表した模様です。信はこの模様の器で、夏に涼しさを演出したわけです。器には冷えたスイカで結露してお盆が湿らないよう、手拭いが敷いてあります。
何気ないですが、細やかな心配りのシーンです。
そんな信に当たり散らすものの、結局はスイカを食べる小吉。
百二十六話「息子の座禅、父の物欲」に続きます。18歳になった麟太郎は、師匠・島田虎之助の勧めで、座禅を始めます。一方、小吉は茶道を始めます。