『夢酔独言』 百二十七話 夢酔、倒れる
急に夢酔(=小吉)の元に金が集まりだしますが、サブタイトルの前では、無力でしかありません。主人公、倒れます。
39歳、従弟の竹内平右衛門と、茶道具集めにハマる小吉。アホみたいに借金をしますが、勝手に向うからやって来るお金もありました。
三十九歳の時、中二階を建てたが、茶室をこしらいて、茶を始めた。竹内平右衛門という従弟といろいろ道具を買い集めたが、欲には際限がねえから、またまた金が欲しくなってきた。
近所はじめ前町の切り見世(女郎屋)からそれぞれ分けて金を借りたが、三日のうちに二十六両集まった。それからは金がなくなると女郎屋より借りたが、かれこれと七、八両ばかり取った。いろいろと茶器を買って、毎日毎日そのことにばかりかかっていた。
地主の中間部屋へ言いつけて、ごろつきを二十人ばかり置いて給金なしに使った。隣三ヶ町、大じものの女郎屋、町中から五節句のたび家主どもが金を持ってきたから、困らなかった。
女郎屋、茶屋にて暴れるものがあればおれに話が来るから、そのたび人を出して済ませてやった。すると所の防ぎになったから、長屋ひと棟から二分ずつ、全部で七両二分づつ、盆暮れの肴(さかな)代にくれた。四軒からも一年に二両ずつ、五、六十両くれた。
人を出すたびに二分三分ずつ金を取ったが、しまいに前町へ見世あるいは商い物を出すにもおれに付け届けをした。何のことはねえ、所の旦那(親分)のようなものさ。
金は湧くもののようにして使ったわ。
※原作よりはやおき訳で引用
何だか出来事がいっぱい書いてあって分かりにくいですが、要約するとこんな感じです。
・従弟と茶道具集めにハマる
↓
・女郎屋から金を借りた
・ゴロツキを置いた
↓
・女郎屋、茶屋での暴力沙汰にゴロツキを派遣して解決
・派遣の報酬として2、3分(約5~7万円)もらう
・さらにお礼としてお金が入って来る
→町中(隣町3町、女郎屋など)から五節句ごとにお金
→長屋ひと棟から年7両2分(約72万円)
→4軒から年に5、60両(約550万円)
→界隈で商売する人達からそれぞれお金
※1両96000円、1分=4分の一両の計算
…うらやまし過ぎる。一年にどんだけもらってんだ。そりゃ湧くもののように使っちゃうよね!
小吉本人は、手配や指図をしているだけです。
ちなみに五節句とは、
1月7日の人日(じんじつ、七草の節句)、
3月3日の上巳(じょうし、桃の節句)、
5月5日の端午、
7月7日の七夕、
さて、そんなわけで、小吉が妻・信に着物をプレゼントしたりとかはフィクション演出なんですけども、主人公、倒れました。
例えフィクションでも、価値のある美術品が壊れるのは心が痛みます。
百二十八話「麟太郎、鉄になる」に続きます。麟太郎が徹夜の寒稽古をします。小吉も9歳の時寒稽古をして(日頃のいたづらの仕返しに天井から吊るされて小便をまき散らし)ましたが、そんなヌルいのでなくて、ガチのやつです。
ちなみにその時のエピソードはこちら↓