『夢酔独言』 百三十九話 麟太郎、妻を取る
弘化二年(西暦1845)、9月。夢酔(小吉)の息子・麟太郎(後の勝海舟)が結婚します。相手は、薪炭屋兼質屋「砥目屋(とのめや)」の娘・民。
しかし、薪炭屋と仮にも武士である勝家とは、身分が釣り合いません。そこで夢酔が取った手段とは…?
今回のお話は、勝海舟が23歳の時(弘化二年、西暦1845)、2歳年上の薪炭屋兼質屋の娘・民を妻にしたという資料から構成しました。
「24歳じゃ年増だ」とか「おれは惚れた女とは結婚できなかった」とかいった、デリカシーのない夢酔(小吉)の発言は、いかにも言いそうですがフィクションです。
ちなみにこれらの発言は、小吉が勝家に婿養子に行ったのがわずか7歳の時だったことに由来します。
それはさておき、砥目屋の娘・民さんが、いったん地主である岡野家(武家)に養子入りしてから、勝家に嫁入りしたのは本当らしいです。
岡野家といえば、夢酔が上坂編で江戸から摂州まで行って、多額の立て替え金返済を助けた地主さん一家です。
↓「上坂編」各話短いあらすじ付きなので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。
この時夢酔は岡野家からお礼のお金を受け取りませんでした(木綿の反物はもらいました)が、息子・麟太郎のために、嫁となる女性を養女にするよう頼んだのです。夢酔は他のだいたいの面ではゲス野郎ですが、こと麟太郎に関しては、子煩悩な父親になってしまうのでした。
そうして妻を取ったはいいですが、相変わらず蘭学の見通しが立たない状況の麟太郎。この時点で、オランダ語が読める程度です。
百四十話「娘の名は夢」に続きます。
麟太郎に長女が誕生します。
お楽しみに!