小吉の女房 第一回「旦那様は就活中」 感想&解説
いよいよ始まったドラマ『小吉の女房』。この記事では、ドラマの感想と、原案にもなった勝小吉の自伝『夢酔独言』目線での解説をします。
※ネタバレを含みます。
あらすじ
貧乏旗本・勝家の女房・お信(沢口靖子)は、毎日お金の苦労をしながらも、無邪気な笑顔も絶やさない。身分にとらわれず、人に分け隔てがなく、度胸の良さも満点だ。夫は、勝小吉(古田新太)。生来の無鉄砲。腕はめっぽう強く、頼まれたら嫌とは言えない。そして両親を冷静に見守るのが、やがて「勝海舟」として江戸の人々を救うことになる跡取り息子の麟太郎(りんたろう)。文政十年、小吉は何のお役目も無い旗本だったが、親のすすめもあって、就職活動に精を出していた。親の付け届けのお陰で、ようやく就職のチャンスをつかむが、嫌みな連中の接待を我慢して務めるという大きな関門が待っていた。女房のお信は無邪気に夫の成功を願っていたが…。 (公式サイトより引用)
感想
お信(沢口靖子さん)が終始ファンシーでかわいい。沢口靖子さんを見るためにドラマを観てもいいぐらい。
『夢酔独言』的解説
・小吉の就活
第一回「旦那様は就活中」は、文政十年(1827)、勝小吉(古田新太さん)が26歳の時から始まります。この時主人公のお信は24歳。息子の麟太郎(福富慶士郎さん)は5歳です。
大黒柱の小吉は、「小普請組」に配属されていますが、これは派遣会社に登録しているだけのようなもので、仕事が無ければ無職と同じ。役職をもらって「御番入(ごばんいり)」を果たすため、小普請組頭のご機嫌伺いに奔走します。
この時の小吉は、11歳の時に組頭の息子をボコボコにして、14歳で家出して4ヶ月間行方不明、21歳で再び家出して3年檻にぶち込まれた過去があり、就活的にマイナス査定のオンパレードです。
頭の息子をボコボコにしたエピソード↓
14歳で家出↓
二度目の家出↓
ドラマで「自分の名前も書けなかった」とか「柄の無い肥柄杓と言われていた」とありますが、これはホントです。
そんなこんなでイバラの道の小吉の就活ですが、父・平蔵(平泉成さん)の贈り物作戦で、何とか御徒組(おかちぐみ、徒歩で行列の供をしたり、警固にあたる)へ編入が決まりそうになりました。
実際はこのレベルにすら達してなかった小吉の就活ですが、このエピソードは、小吉がボコボコにした頭の息子・石川太郎左衛門(高橋和也さん)が『夢酔独言』で御徒組に属していたことから来ていると思われます。
また、出世のために権力者に金品を贈るというのは、『夢酔独言』では就活の一環として当たり前に描かれています。
この石川太郎左衛門が、ドラマではいい味を出しています。『夢酔独言』を知っていると、他の皆さんが見知ったキャラになってしまうんですが、石川は11歳の小吉にボコられたきり登場しないので、ほとんどオリジナルキャラという感じで、新鮮でした。
・小吉の実家男谷家
そんな石川のご機嫌伺いをするために、酒の席に出る小吉(ちなみにこの時小普請組頭は石川の父ではなく、大久保上野介という人に代わっています)。
小吉は暴れ者なので、大酒呑みのようなイメージが湧きますが、実際は酒が大嫌いでした。よくあるシチュエーションで、酒を飲むよう勧められる小吉。呑むのをためらっていると、小吉の実家(勝家は養家)男谷家の悪口が始まります。
男谷家の祖は、越後小谷郷出身の盲人で、江戸へ出て検校(けんぎょう、盲人の最上級の官名)となり、一代で財を成しました。その末子の平蔵(小吉の父親)が、検校の遺産を持って旗本(御目見え以上の武家)の養子となり、武士の身分を得たのでした。小吉の祖父は武士ですらなかったのです。
そのことを、「金で武士の身分を買った」と馬鹿にされる小吉。頭にきて、その場にいた皆さんをぶん投げてしまいます。そこは我慢しろよ!
このくだりはドラマオリジナルです。ぶん投げなくちゃ話は盛り上がりませんが、もっと堪えてほしかったかなあとも思います。代わりにお膳をぶっ壊したり、怒りのあまり刀を抜きそうになって、皆さんが逃げ出す、とか(個人的な、趣味趣向的見解です)。
この話を聞いた平蔵とお信のくだりはイイ話なので、ドラマを観て確認してくださいね。
・父親の死
そんな折、小吉の父・平蔵が脳卒中で倒れ、亡くなってしまいます。『夢酔独言』では小吉は真崎稲荷へ出稽古に出ていて、走って駆けつけるのですが、ドラマではお信とともに駆けつけます。
ショックでふさぎこみ、21歳から3年間、家出した罰で入れられていた檻に引き籠る小吉。檻そのまんま残ってるのかよとツッコんでしまいましたが、お信に励まされ、元気を取り戻します。
檻に入れられるくだり↓
ドラマではダイジェストでしたが、『夢酔独言』で小吉は檻に入れられて1ヶ月もしないうちにこっそり檻の柱を抜く細工をしています。反省の色0か。
・小吉の頭の傷
ここでかつて小吉が他の子の罪をかぶって父・平蔵に殴られるくだりがありますが、これは『夢酔独言』のエピソードをかなりアレンジしています。
実際は、小吉自身がよその子にケガをさせ、怒った平蔵に縁側の柱へくくりつけられ、以下同文。
ドラマでは他人をかばう小吉を見てお信が惚れたみたいになっていますが、『夢酔独言』バージョンならドン引き必至です。あと、『夢酔独言』でこの出来事は小吉が5歳の時で、お信の勝家との養子縁組の話は、まだありません。
小吉がくくられて殴られるくだり↓
テレビドラマだからか、小吉も普段よりいい人演出1,4倍増しぐらいになってました。劇場版ドラえもんで、ジャイアンがいいやつになるのと同じ現象ですね。
・まとめ
そんなこんなあって、小吉は「おれはかたつむりみたいに殻は背負わねえ!なめくじになる!」などと訳の分からんことを言い出します(すみません、ここだけ何を背負うのかちゃんと聞いてなかった…見栄とか家柄だったと思います)。お信も晴れやかにそんな小吉を受け入れるのですが、現実に夫が「なめくじになる」とか言い出したら、すっげー嫌だと思います。海賊王の方がマシ。
『小吉の女房』第一回には、なぜか要所要所にナメクジが出てきます。ナメクジが苦手な人は、ドラマの代わりにマンガを読みましょう。気を付けて!
そして、11日の放送を見逃した方に朗報!
『小吉の女房』第一回の再放送は、1月13日(日)18時45分からです!
・次回予告
さて次回の『小吉の女房』は、「麟太郎、出世する」です!
江戸城へお庭拝見に行く麟太郎、そこで偉い人の目に留まって…。
『夢酔独言』での該当エピソード(推測)はこちら↓
次回の放送は1月18日(金)!
マンガを読んで予習しながら待つべし!
ドラマのキャスト・登場人物紹介はこちらから↓
(第一回の)最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。