『小吉の女房』第6話「お信、鼠小僧の一味になる」 感想・『夢酔独言』的解説
・あらすじ
小吉(古田新太)はひょんなことから役人にいじめられていた若者ふたりを助け、自宅に居候させることに。農村出身のふたりは好青年で、すぐに勝家になじむが、やがてお信(沢口靖子)はふたりには世間をはばかる秘密があるのでは、という疑念を抱く。
※NHK公式サイトより引用
・感想
巾着切りの銀次(小松利昌さん)がすごく有能。
河童が出た。「太助」はダジャレなのか…?
「ずぼんぼえ」って何だ?
名探偵お信からの、鼠小僧お信。
お信のコスプレと、妄想するお信かわいい。
・『夢酔独言』的解説
第6話は、天保七年(西暦1836年)、小吉(古田新太さん)35歳、お信33歳、麟太郎(鈴木福さん)14歳の時の話です。
長女・順が誕生します…とドラマでは説明されていましたが、順は正確には小吉の次女です。長女ははなといいますが、資料はあまり残っていません。小吉が1843年に書いた『夢酔独言』で「おれが娘は十四歳の時から、手前の身の事は人の厄介になったことはない。家内じゅうの者がかえって世話になる」と言っているので、順に姉がいたことは確かです。しっかりした娘さんだったようです。
お食い初めをする勝家。時は天保の飢饉でしたが、小吉の兄・彦四郎(升毅さん)が鯛を用意してくれました。飢饉で地方から江戸へやって来る人達のために、炊き出しが行われているようです。
「江戸はいいですが、田舎は大変でしょう」などと、将来政治家になって江戸城無血開城でもしそうなグローバルな視点で飢饉を語る麟太郎。
お信がきらず飯を炊くシーンがありますが、きらず飯は『夢酔独言』の小吉一度目の家出のくだりで登場します。
また、当時麟太郎は、わずかばかりの玄米を自ら粥にして、両親に出していたと苦労話を『氷川清話』で語っています。一方、小吉は『夢酔独言』で「飢饉の年には日々に一朱ずつ小遣いにして遊んだ」と言っています。一朱は一両(約96000円)の16分の一なので、約6000円です。その金を家に入れろ。とはいえ、飢饉なので、特にお米はべらぼうに高かったはずです。
一方、巷では「鼠小僧」の話題で持ちきりです。鼠小僧が処刑されたのは4年前の天保三年ですが、「処刑されたのは偽者だ」とか、「二代目鼠小僧だ」などなど、噂が乱れ飛びます。
そこへ河童が現れます。
なんでも地方から出てきたと言う、留吉と太助という若い二人組。見せ物をして金を稼ごうと、カッパの格好をしていたらしいですなるほど!
岡っ引きに目をつけられていた二人を、「カッパなんだから人間の法律じゃ裁けない」というような珍しくもっともな発言をして逃がす小吉。その後、家に連れて帰ります。
留吉と太助は出てこないけど似たようなシーン。
「助けていただいてありがとうございます」と言う太助。「ダジャレなのか?」と気になって仕方ありませんでしたが、修理・子守り・芝居と、居候としては申し分ない特技を持つ二人は、すぐに勝家になじみます。というか利平次(石倉三郎さん)の後釜です。
二人が「ずぼんぼえ」という奇天烈な演目を踊るのですが、「ずぼんぼ」とは、「獅子舞・虎の形をした紙製のおもちゃで、和紙を箱型につくって胴とし、足先にシジミの殻を付けて重しとしたもので、ウチワなどで風を送って踊らせる。名は獅子舞の囃子(はやし)に由来」とあります。この「獅子舞の囃子」が、「ずぼんぼえ」なのでしょう。
二人と一緒に「ずぼんぼえ」を踊る麟太郎とお信。なごみます。
ところがその夜、留吉と太助が怪しい動きをしているのを目撃するお信。前回お婆様を尾行していた時の探偵の性(さが)がうずきます。
その後、町で「鼠小僧参上」という大昔のヤンキーの落書きみたいなメモ書きを見て、「あの二人の字に似てる…!」とピンとくるお信。一方岡っ引きは、「鼠小僧の走り方がこの間のカッパに似てる!」と気付きます。みんな勘が良すぎる。
家に帰ったお信は、「かまどの灰がなくなってる…さてはあの二人が…」と推理します。何も顔を汚すのにかまどの灰でなくても…炭とかあるじゃん…と思いますがそれはさておき、果たして留吉と太助が鼠小僧でした。
とりあえず二人をかくまうお信と小吉ですが、岡っ引きが家の周りをうろつき始めます。完全に怪しまれてます。
ここで「自身番」という所が出てきますが、これは交番みたいなもので、各町内にあって、地主や家主が交代で詰めて、町内の出来事を処理しました。
「鼠小僧をかくまったとなると、ただじゃ済まねえ」と言う小吉、銀次に岡っ引きの懐を探らせて弱みを握れるようなメモを入手し、それをちらつかせて二人から手を引かせます。かくまうのはまずいと言いつつ悪事を平気で働くところは、さすが小吉ですね!…いや、ダメだろう…。
「これでおれ達も鼠小僧の仲間か…」とつぶやく小吉に、お信は鼠小僧になった自分を想像してうっとりします。大丈夫かよ。ここでお信の鼠小僧コスプレが出てくるんですが、すごくかわいいです。お信用に赤いアクセントがついた衣装ももちろんですが、はしゃぎつつ可憐なお信もとい沢口靖子さんがかわい過ぎる。
そんなこんなで、留吉と太助の二人組は、田舎へ帰っていきました。
「でも、鼠小僧の一味なんて…大変なことをしてしまいました…」と言いつつほほ笑むお信。お信はとんでもない物を盗んでいきました、それは私達の心です…そんな第6話でした。
・次回予告
第7話「お信、花魁の文使いになる」は、2月22日(金)20:00放送です!!
…あらすじに心当たりがない!
ドラマでお信が活躍するほど、『夢酔独言』から離れて予想がつかなくなるというジレンマ!
予告で「吉原の仮宅」と言っていたので、このあたりのエピソードが使われるかもしれません。小吉の行きつけの見世「佐野槌屋」が出てきたら嬉しいが、果たして。
お楽しみに!
第6話の再放送は2月17日(日)18:45から!かわいいお信のコスプレが見られます!!