マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『小吉の女房』 第4話 「麟太郎、三途の川から呼び戻される」 感想・解説

 

『小吉の女房』 第4話 「麟太郎、三途の川から呼び戻される」 感想・解説

 

 毎回、やたらかわいいお信(沢口靖子さん)を堪能できるドラマ『小吉の女房』。第4話「麟太郎、三途の川から呼び戻される」の感想と、ドラマの原案にもなった勝小吉の自伝『夢酔独言』と照らし合わせた解説をまとめました。麟太郎が犬に噛まれるくだりの、『夢酔独言』引用付き。

 

 

 

  

  

・あらすじ

 

 

 お信(沢口靖子)と小吉(古田新太)の元に、長男の麟太郎が戻ってきた。将軍の孫の遊び相手に江戸城に上がっていたが、肝心の若様が病気になり、役目が無くなったのだ。勝家は出世の糸口を失い、登勢(江波杏子)はがっかり。そして戻ってきた麟太郎は大人びて、粗暴な父・小吉とどうも折り合いが悪くなってしまう。更に悪いことは重なり、麟太郎が犬

に急所を噛まれて、生死をさまよう事態に…。

※公式サイトより引用

 

 

 

・感想

 

 

 今回はお信(沢口靖子さん)の出番少なめ。でも、しゃべるとかわいい。

 

 小吉(古田新太さん)がずっと褌一丁。 

 

 

 

・『夢酔独言』的解説

 

  

 今回は、天保二年(西暦1831)、小吉30歳、お信28歳、麟太郎(福富慶士郎さん)9歳の時のお話です。

 冒頭で、小吉が「ケンカをして、長鉤を持った連中と叩き合って、刀が鍔元で折れて…」というような話をしていましたが、このエピソードは、小吉が16歳の時、浅草の八幡様のお祭りに出かけた時のことを言っています。

 

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 小吉と一緒にいるのは、巾着切りの銀次(小松利昌さん)。すっかりレギュラーキャラです。 

 そこへ現れた浪人風の男『夢酔独言』試合に負けた腹いせに小吉を闇討ちにしようとしたでおなじみの、小林隼太です。

 ドラマのくだりはこれ。

 

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 一方、7歳(2年前)から江戸城11代将軍徳川家斉の孫・初之丞様のお相手をしていた麟太郎は、初之丞様がご病気のため、相手役を免ぜられて勝家に帰ってきます。

 

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 ラジオ体操をして放屁したり、浪人とケンカする父・小吉に、麟太郎はリアル引き気味です。

 ここで着物を繕うお信の「着物は破れなければ良し」というようなセリフがありますが、『夢酔独言』冒頭に、同じような文言があります。

 

不断の着物は破れざれば是(よし)として、勤の服はあか(垢)のつかざれば是とし、

 

  勝家に戻った麟太郎は、「三つ目向う(三ツ目橋のことか?)」の多羅尾七郎三郎の用人の元へ、本の稽古に通い始めます。ここで小吉が「おれも聖堂に学問を習いに行っていたが、あんまり退屈だから毎日サボって馬乗りに行っていた」とロクでもない話を麟太郎に聞かせますが、こちらは小吉11歳の時のエピソードです。

  その稽古の道中で、麟太郎は犬に急所を噛まれてしまいます(登場するワンちゃんがめっちゃ可愛いので、ぜひドラマで確認してください)。

 ドラマでは麟太郎はすぐに自宅へ運ばれていますが、『夢酔独言』では、本所花町の仕事師(土木関係)の家にいったん麟太郎は運び込まれています。ドラマで麟太郎が、布団に寄りかかる体勢でいましたが、『夢酔独言』の描写を再現したものです。

 その後小吉が「しっかりしろ!」と麟太郎を叱ったり刀を抜いて畳にブッ刺したり夜中に褌一丁で金毘羅様へお参りしたり他の人を寄せ付けずに麟太郎を抱いて看病しますが、だいたい『夢酔独言』に書いてある通りです。

 

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  麟太郎を心配するあまり暴れまわって、「勝小吉はとうとう狂った」などと噂されますが、それも『夢酔独言』通りです

 

 それから小吉の道具屋仲間が六地蔵参りをしたお札をお信にくれたり、中野碩翁(里見浩太朗さん)が風のうわさを聞いて高価な薬伊達直人にさずけてお信が「あの方は白鬚(神社の神)様の化身!?」などとファンシーなことを口走ったりするという、『夢酔独言』には無いハートウォーミングな展開が繰り広げられます。

 

 そしてなんやかんやで、傷が治った麟太郎。『夢酔独言』によると、完治まで70日かかったそうです。

 そんな麟太郎に、小吉は「おれも上方へ行こうとした時、崖から落ちて金玉を打った」という話をします。これは、小吉が14歳で家出をした時のエピソードに由来します。

 

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・『夢酔独言』でのくだり

 

 

 麟太郎が九つの時、江戸城から勝家に帰ってきた。そこで本の稽古に三つ目向こうの多羅尾七郎三郎の用人の塾へ通わせたが、ある日稽古に行く途中、病犬に出くわして金玉を食われた。

 その時は、花町の仕事師八五郎というのが家へ上げて、いろいろ世話をしてくれた。おれは家で寝ていたが、知らせてきたから、飛んで八五郎の所へ行った。

 麟太郎は布団を積んだものに寄りかかっていたから、前をまくって見ると、金玉が下りていた。幸い外科医の成田というのが来ていたから、

「命は助かるか」

と聞いたら、難しいことを言うから、まず息子をひどく叱ってやった。するとそれで気がしっかりしたようすだったから、駕籠で家に連れて帰った。

 今度は篠田という外科が、地主に呼ばれて来た。医者が傷口を縫おうとするが、震えている。おれが刀を抜いて枕元へ立て置き、気張ったから、息子は少しも泣かなかった。

 傷口もやっと縫ってしまったから、医者にようすを聞いた。すると

「御子息の命は、今晩にも受け合う(保証する)ことはできませぬ」

と言う。家中の者は泣いてばかりいるから、おれは思い切り説教をして、叩き散らしてやった。

 その晩から水行をして、金毘羅様へ裸参りをして、毎晩祈った。

 始終おれが抱いて寝て、他の者には手を付けさせぬ。

 毎日毎日暴れ散らしたら、近所の者が、

「今度岡野様(地主)の所へ来たお侍は、子供を犬に食われておかしくなった」

と言いおったくらいだ。

 が、とうとう傷も治り、七十日目に床を離れた。

 それから今に何ともないから、病人は看病が肝心だよ。

※はやおき訳で引用 

 

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「時ノカ子(ときのかね)」と書いてある辺り、「イリエ丁(入江町)」が当時の勝家の住所で、「ハナ丁(花町)」が、麟太郎が運び込まれた八五郎さんの家があった場所です。

 

 

 

・次回予告 

 

 

第5話「おばば様の秘密」は、2月8日(金)20:00~

BSプレミアムにて放送です!!

 

あらすじはこちら↓

www.nhk.or.jp

 

 サブタイトルからして、『夢酔独言』にはないオリジナル展開かもしれませんね!

 「利平次(石倉三郎さん)が急逝」との文言があるので、このお話でも読んで、第5話を待ちましょう。

 

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