『夢酔独言』 九十四話 品用師
当時、寺から金を借りる仲介をすると言っては、武士から前礼金を騙し取っていた「品用師(ひんようし)」と呼ばれる詐欺師。
小吉の友達も、次々に金を取られ…。
小吉VS詐欺師、前編です。
冒頭から講中だの寄進だのという聞き慣れない単語が出てきます。
当時は同じ神仏をお参りする人たちが集まって「講(こう)」というサークルをつくって、お金を集めて催しをしたり、信仰の品を寄進したりといった活動していました。講のメンバーを「講中(こうちゅう)」といいます。
小吉は長年柳島の妙見宮(日蓮宗、葛飾北斎も信仰していた)を拝んでいますが、摩利支天(まりしてん=武士の守り本尊)を祀る神社で講のメンバーを集めたり、かと思ったら祈祷師に弟子入りして稲荷の修行をしたりと、ご利益にあずかるためにワリと節操がありません。
ところで『夢酔独言』の中には、金の匂いのするところに悪いやつがすぐ寄ってきます。
今回登場するのは品用師。ざっくり詐欺師と捉えてください。
江戸時代はお寺が金貸し業をしたこともあったようで、寺の関係者のふりをして、お金をだまし取ります。
「そのひん用は不断はりっぱのなりでいて或(あるい)は神社又は参詣の多い寺又世の中の講しゃく場いろいろの所へいって、神へは信心のようになりて、人の目に立(たつ)ようにして、諸山の金の世話人のようにして、ひとびとをだまして前礼の金をとって住居を立退て、またまた外ではめるが一年中に商売にして居る者だ。其仲間が数十人有て、不レ残(のこらず)町同心并(ならびに)岡っ引へのつけ届をしているから、大丈夫の仕事だ」
※原作より現代仮名遣いで引用
この品用師に、小吉の友達の長谷川さんもだまされてしまいます。というか、長谷川さん警戒心なさ過ぎです。
そんな品用師の魔の手が、友達その2の今井さんにも…!
九十五話「小吉、品用師を騙す」に続きます。何だかネタバレしている気もするぞ!