マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『小吉の女房2』第五回「お信、娘義太夫になる」感想&解説

  土曜時代ドラマ『小吉の女房二2』の地上波放送が始まったので、BS放送当時に描いた感想&『夢酔独言』的解説記事を公開し直します。内容はBS放送時のものです。ネタバレがおおいにあるので、ドラマを観た後で読んでくださいね。 第五回「お信、娘義太夫になる」は、2月26日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です! 

 

 

 

    勝海舟の父・小吉の女房であるお信を主人公にしたドラマ『小吉の女房2』

    この記事では、ドラマの感想と、勝小吉および勝海舟に関係する資料とドラマの内容を照らし合わせた解説をします。

    ネタバレあり。

※当初は勝小吉自伝『夢酔独言』に関係する部分を解説していましたが、小吉も晩年に近づき、『夢酔独言』の内容がもはや出てこなくなってきたので、はやおきの持てる知識で手あたり次第解説したいと思います。

 なお、解説に登場するセリフは、おおむねうろ覚えです。

 

 

 

 

 

 

・第五回「お信、娘義太夫になる」あらすじ

 

お信(沢口靖子)と小吉(古田新太)は、新門辰五郎市川右團次)に頼まれて、娘義太夫の見習いだった少女・お峰(福本莉子)をしばらく預かることに…。天保の改革で娘義太夫は御法度になり、困っていたのだ。なんとか一度だけでも人前で義太夫を語りたい、と願うお峰のために、お信と小吉は麟太郎(稲葉友)や芸者・お民(大西礼芳)の協力も得て、秘密の会を催すのだが、密告により、会場に町方が踏み込んでくる。

※NHKホームページより引用 

 

 

・感想

 

 ・麟太郎が文吉さんのことをめちゃくちゃ意識している

 

・まさかの「傾城阿波鳴門」登場

 

・お信、旗本の妻なのにめちゃくちゃ声が出る

 

・毎回ちょっとだけ登場する、石川太郎左衛門の報われなさがクセになる

 

 

 

 

・解説

  天保十三年(西暦1842)春お信沢口靖子さん)39歳、小吉古田新太さん)41歳、麟太郎稲葉友さん)20歳、お順稲垣来泉さん)7歳です。

  小吉が自伝『夢酔独言』を書くという一大イベントが天保十四年に控えているからか、時間が天保十三年で止まってる気もするけど、気のせいだな!

 

 天保の改革で、質素倹約綱紀粛正の重苦しい空気ただよう江戸の町。

 

 今回は、勝家に巾着切りの銀次が訪ねるところから始まります(銀次の持ってきたある道具により、前回ひどい目にあったお徳さんが復活します。よかったね!)。 

  銀次は奉行所へ、先ごろ摘発され捕まっていた娘義太夫たちが連行されてくるのを見に行くのだと言います。

 義太夫とは、名前の通り娘が語る義太夫節および語る娘を指します。江戸で大流行していて、アイドル的存在だったとか。

 

  銀次が言っていた「伝馬町の牢屋」とは、揚屋(あがりや)とも呼ばれ、『夢酔独言』にも登場します。御家人大名旗本の臣から、僧侶医師山伏などの未決囚を入れたところだそうです。

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手元の江戸時代の地図より。「ラウヤ(牢屋)」とあります。 

 

 銀次と奉行所前へやって来た小吉(そういえば脚気は良くなったのか、元気そうでした)は、娘義太夫の三味線を見せしめに壊す役人を見て、「改革が聞いてあきれるぜ」と言ってその場を去ります。

 

 

 

  家へ帰ると、勝家に新門辰五郎さん(市川右團次さん)が、前回麟太郎があからさまにガラの悪い男達に絡まれていたところを助けた娘Aを連れてきていました。娘の名はお峰。行くあてが決まるまで、勝家の手伝いとして置いてほしいとのこと。

 しかし、現在勝家は、虎の門の二間しかない狭い家に押し込められている状態です。人を増やす余裕が、物理的にありません…というようなことをお信がいうと、

麟太郎(島田)虎之助の所へ行かせればいい」と小吉。一応勝家の当主なのに、何て雑なあつかいなんだ…。

 そこへ麟太郎が帰宅。小吉が娘2人(お峰と、深川芸者の文吉)を助けたことについて麟太郎に聞くと、文吉さんのことを思い出して挙動不審になる麟太郎。

  家を出るよう言われると、「ちょうど島田先生に禅の修行の勧められているので、ちょっと行ってきます」的なノリで、あっさり家を出ます。

 これは勝海舟の発言をまとめた『氷川清話』にあるくだりで、

 

 かの島田という先生が、剣術の奥意を極めるには、まず禅学を始めよと勧めた。それで、たしか十九は二十の時であった、牛島の弘福寺という寺に行って禅学を始めた。

※はやおきによる現代仮名遣いで引用 

 

とあります。 

 

 牛島の弘福寺はここ。

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第三回で、お信中野碩翁さん(里見浩太朗さん)と散策していた辺りですね。

 

 浅草新堀にある島田虎之助さんの道場へ行く道中でも、月を見上げては文吉さんのことを思い出す煩悩まみれの麟太郎

 

 漫画でも、座禅中に異性を思い浮かべてはシバかれる麟太郎ですが、

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 実際の勝海舟も、「若い時のやり損いはたいがい色欲から来る」と熱弁して(たかどーかは分からんですが)います。

 

 

 

 さて、麟太郎の妹・お順は、新しく来たお峰が、お兄ちゃんを追い出したように思えて面白くありません(一方の麟太郎は、都甲斧太郎先生と料理屋へ行って美味しい物をおごってもらって、文吉さんとの再会を果たしたりしていましたが…)。

 熾烈なあやとり合戦をしたりしていましたが…。

 

 ある時、お峰が隠し持っていた「傾城阿波鳴門(けいせいあわのなると)」に水をこぼしてしまします。

 実はお峰は娘義太夫を稽古していて、あと少しで初舞台というときに、娘義太夫が取り締まられてしまい、まだデビュー前ということで、投獄の難を逃れたのでした。

 

 この「傾城阿波の鳴門」ですが、徳島県では人形浄瑠璃の演目として知られています(はやおきは徳島県民)。特に両親を探す娘・お鶴「父様の名は十郎兵衛、母様の名はお弓と申します」と言うくだりはあまりに有名で、マンガ『夢酔独言』にも、「誰も知らないだろう」と思って、小吉の狂言として盛り込んでいます。

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    しかし、こうしてドラマで取り上げられると、小吉が石川太郎左衛門高橋和也さん)みたいに、娘義太夫の追っかけだから知ってたみたいになりますね。

  毎回ちょっとだけ登場しては、短いスパンで悪だくみをしてはやっつけられる石川太郎左衛門も、だんだんかわいく思えてきます。

 

 

 

 何やかんやで内輪で娘義太夫の席を設けることになった小吉たち。

 ここからのくだりは、純粋にお信の美声を、ドラマにて鑑賞してくださいませ。旗本の妻とは思えぬ、往年の俳優のような声量です。

 欲を言えば、お信の娘義太夫姿も見たかったな…。

 

  

 

 

 第六回「小吉、雁金づくりの友になる」は、5月7日(金)20:00~、NHKのBSプレミアムにて放送です!

 あらすじはこちら↓

www.nhk.jp

 

 

 

 『夢酔独言』の内容が出てくる気がしない…!

 いつ『夢酔独言』を書くんだ小吉は…。

 麟太郎文吉さんの仲は進展するのか!?結婚して赤坂へ引っ越して、お順もついて行ったりするのか!?

 お楽しみに!

 

 

 

 第六回「小吉、贋(にせ)金づくりの友になる」の再放送は、2022年3月5日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!