土曜時代ドラマ『小吉の女房二2』の地上波放送が始まったので、BS放送当時に描いた感想&『夢酔独言』的解説記事を公開し直します。内容は変わってないよ!ネタバレがおおいにあるので、ドラマを観た後で読んでくださいね。
第二回「小吉、腹を切る?」は、1月15日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!
勝海舟の父・小吉の妻のお信が主人公のドラマ『小吉の女房2』。
この記事では、ドラマの感想と、勝小吉自伝『夢酔独言』の内容と照らし合わせた解説をしていきます。ネタバレあり。なお、劇中セリフはおおむねうろ覚えです。
あと、第一回ではすっかり失念していた、メインキャストの皆さんの名前も入れました。
・第二回「小吉、腹を切る?」あらすじ
勝小吉と女房のお信は、大身旗本・岡野孫一郎と祖母の多賀を助けるために、騒動に巻き込まれる。悪党の用人・丈助に謀られ大金が必要になり、小吉は岡野家の知行所である摂津の農村まで出向いて、金を作ろうと算段するが、したたかな百姓たちを相手に大苦戦。一方、江戸で留守を守るお信と麟太郎は、岡野家を襲うならず者たちと対決することに…。そして奔放な小吉を見守ってきた兄・彦四郎には死期が迫っていた。
※NHKホームページより引用
・感想
・小吉メイン回。お信はすりこぎ棒を持って戦う
・斎藤監物さんが再登場
・お多賀さんが茶道具ずっと持ってるけど最終的にどうするんだろ…
・『夢酔独言』的解説
舞台は前回の続き、天保十年(西暦1839)、江戸・本所。お信(沢口靖子さん)36歳、小吉(古田新太さん)38歳、麟太郎(鈴木福さん・後の勝海舟)17歳、麟太郎の妹・お順4歳です。ちなみに実際には順の上に長女・はながいるのですが、ドラマでは省略されています。
第二話は、岡野家(地主さんで、小吉一家は岡野家の敷地内に住んでいます)から始まります。
控えの帳面を渡せ(by小吉)渡さない(by大川丈助)で問答する二人。
※前回までのあらすじ…
地主・岡野家のまかない用人(武家の庶務・会計係)として雇われた大川丈助(マキタスポーツさん)。岡野家のために立て替えた金が339両あると言って、返金を要求してきた。しかし岡野家にはそんな大金を用意する余裕はない。339両とか言ってるけどつけかけ(水増し計算)じゃないの~?と周囲は疑うが、証拠の帳面を丈助は渡さない(岡野家のぶんの帳面もあったけどどっか行った)。まごまごしているうちに、丈助がご老中に直訴したりして大事に…
岡野家当主の孫一郎(中村靖日さん)は、「一文もやらずに片付けたい」と言いますが、小吉は「物騒な手段になる」と返します。
『夢酔独言』では、多分このあたり。
セリフはほぼ原作通りです。『夢酔独言』では、小吉が岡野の親戚の皆さんとのやりとりで、「金をやらぬようにする(方)法は、今皆様へお話し申すと、すぐに目でもお回しなさるから言いませぬ(原作よりはやおきによる現代仮名遣いで引用)」と答えています。
何やかんやで小吉に一件を任せることになった岡野家。「いったん任されたからには口出し無用」と(何か質問しようとしたけど、さっそく口出し無用を適応されて答えてもらえない孫一郎さん)、小吉、解決に向けて動き出します。
この口出し無用は、『夢酔独言』ではもっと堅固なあつかいになっていて、その証文や書付を孫一郎さんに書かせていました。また、小吉の息子の勝海舟も、問題を請け負う際は、「一切を任せて口出ししない」のを条件としていました。
舎弟の巾着切りの銀次に、桶屋と古着屋からいろいろと調達させる小吉。岡野家の知行所(幕府から割り与えられた領地的な土地)という、摂津(兵庫県)の御願塚(ごがんづか)村へ向かいます。※武士の無断外泊は禁じられています。
摂津行きのメンバーは、小吉と銀次、それから品用師(詐欺師。『小吉の女房』第五回登場)の斎藤監物さんです。ならず者しかいねえ…。
『夢酔独言』では、一応武士の皆さんで行きます。
出発の場になぜかジャストタイミングで現れ、「一緒に行きます!」と元気よく申し出る島田虎之助さん(麟太郎の剣術の師匠。第一回で小吉にムリヤリ吉原へ連れて行かれた)。そこは小吉、「麟太郎をよろしく頼む」と言って、3人で旅立ちます。まあ、許可取ってないと行っちゃダメですし…。
数日後、岡野家できらず飯(米におからを混ぜたもの)を炊くお信(なぜ岡野家に居るかは気にしない)。確か『小吉の女房』シーズン1でも登場しましたが、きらず飯は『夢酔独言』にもでてくる節約メニューです(米一升におから2,3升の配合だったそうです)。
そこへ絵に描いたようなガラの悪い3人組が登場。ガラ悪く借金の取り立てをしてきます。おからを擂っていたすりこぎ棒で応戦するお信…しかし多勢に無勢、岡野家のご隠居お多賀さん(松原智恵子さん)は大川丈助の押し込め(出入り禁止の刑)部屋の見張り番をしていた2人に助けを求めますが、「見張りが仕事なんで…」と役に立ちません2人のうちどっちかが行ったらいいじゃん。
そこへジャストタイミングで麟太郎と島田さんが登場。3人組をシメます。『夢酔独言』でも「息子が柔術の相弟子に島田虎之助」と紹介されている島田さん、柔術もデキる人なのです!退散する3人組、お信がすりこぎ棒を持って戦おうとしたことについて、皆でひとしきりホンワカします。
一方、摂津の御願塚村。小吉一行は、代官陣屋(だいかんじんや。代官の居る所)に泊まることになります。
この時、小吉は改名の届け出が受理されて「夢酔(むすい)」となっており、表向きは「岡野の家来・左衛門太郎」として摂津へ行きましたが、皆「夢酔様」と呼んでいます。ともあれややこしいので、ドラマでは「小吉」で統一されています。
村の代官山田新右衛門さんに、400両ほど要求する小吉。ちなみに『夢酔独言』換算では、1両は訳96000円、×400=3840万円もの大金です。
「不作続きで生活が苦しくて…」と訴える名主の皆さん(宇市さんと源右衛門さんという役名でしたが、『夢酔独言』にも、実際この2人が登場します)。
しかし村を見てみると、子供が農作業を手伝うことなく昼間から遊んでいたり、名主たちは俳諧を楽しんでいたりと、暮らしぶりは楽そうです。楽だからって、3800万円も出したくないですけども。
ここの場面で子供たちが遊んでいるのは「ことろことろ」で、鬼ごっこの変形ヴァージョンのようなものです。
一方江戸では、お信は男谷家(小吉の実家)に呼び出され、「武士が無届けでどっか行っちゃダメ!勝家ばかりか男谷家も偉い人からにらまれるじゃん(意訳)!麟太郎が小吉みたいになったら困る!」と彦四郎さん(升毅さん・小吉の兄)やお遊さん(高橋ひとみさん・兄嫁)から叱られます。「私は麟太郎には旦那様(小吉)のように人を助ける男になってもらいたいと思います」と言い返すお信。まるでそうなることを知っているかのようだ…。
片や忘れられがちだけど一応毎回登場している石川太郎左衛門さん(高橋和也さん・小吉の子供時代の剣術道場の先輩。小吉をからかってたら木刀でボコボコに殴られた)。小吉が無断で摂津に行くことを上司にチクり、「小吉のやつ、岡野家ともども地獄行きだ」とデカめのひとり言をつぶやきます。
摂津の村では、小吉が村の子供たちに剣術の稽古をつけます。しかし、一向に400両が出てくる気配はなく…。
小吉は世話になってるお礼とかで、村人一同を集めた宴会を催します。「いよいよあきらめたか」と喜ぶ代官たちでしたが…。
ここで、サブタイトルの「小吉、腹を切る?」の意味が分かるわけですが(中略)、結果400両は手に入り、小吉は江戸へ帰りました。小吉、生きてます。
この間約1ヶ月。具体的には、11月9日江戸を立ち、12月9日に帰りました。小吉と大川丈助との話し合いで、12月19日には339両返す約束になっていたので、けっこうギリギリの日程でした。
『夢酔独言』では、金を出すことを拒む百姓が竹槍を持って押しかけたり、小吉が見ず知らずの大坂の奉行の知り合いのフリをして贈り物を自作自演したり、温泉入りに行ったり、たまに大坂へ行って遊んだり、雨乞いしたりしましたが、それらのエピソードは漫画でお楽しみください。
無事に大川丈助へ339両返し、もろもろの借金を返した(ガラの悪い3人組の件も解決したようです)あとに残った50両を勝家にお礼としてくれるというお多賀さん。しかし「知行所の村が岡野様のためといってくれた金だから」と受け取らない小吉。
受け取る受け取らないの問答をした末、「麟太郎の着物に」と木綿一反を提案するお信。その反物代はどこから出るんだとも思いますが、現金がダメなら物でお礼をもらおうという発想が、お信もしっかりしています。
『夢酔独言』では、江戸に帰った翌日お婆様が亡くなったとあります。
それで万事解決…というわけにもいかず、小吉は無断で摂津へ行った罰で他行留め(たぎょうどめ…外出禁止)の罰を受けます。
それから石川太郎左衛門さんがまたよからぬ企みをしかけますが置いといて、翌天保十一年(西暦1840)夏、小吉の他行留めが解かれますが、間もなく彦四郎さんが倒れ、亡くなります。
ドラマでは兄の死に際を看取ることができた小吉ですが、実際は2月から9月まで他行留めは続いており、彦四郎さんが亡くなったのは6月でした。
第三回「お信と白髭様の庭」は、4月16日(金)20:00~BSプレミアムにて放送です!
あらすじはこちら↓
『夢酔独言』で小吉が活躍するくだりはだいたい終わってしまったので、来週から解説することがなくなりそうですが…そのぶん、お信のかわいさを堪能できそうですね!
お楽しみに!