『夢酔独言』 六十八話 南平は息子の師匠
今回のお話は、小吉の息子・勝海舟の発言をまとめた本『氷川清話』を元に構成したものです。
彼の父親・小吉と親しかった、殿村南平のその後。
勝海舟は、「勝海舟全集」全21巻に、別巻が2冊あるぐらいたくさん文章を書いていますし、書かれています。が、内容はあくまで己の研究や仕事、記録などが主で、プライベートな内容はほとんどありません。マンガ化担当者も、「勝海舟全集!?全部読む!」と思って試しに読みましたが、
「勝海舟全集」1巻 開国起源1
緒言
一、この編、天保年間より慶応丁卯にいたる外国交渉の事を記す。その閲者の賭易からんがため、これを各門に分ち、専らその一事の顛末を提挙す。また別に年次を逐て邦内の形勢を列叙し、かれこれ対照一目して時勢沿革の一斑をしらしめんとす。
一、当時開港訂約事端多岐その事を記載する者、汗牛充棟のみならず、…
???
緒言だけで6項目もある…。字が読めないし意味も分からない!
本編が始まっても、「米国政府の決議」…。
2ページで断念しました。ムズイ。誰がこんなもん読んで喜ぶんだ!学者かよ!
11巻だけは、読んで面白いです。息子(老人)のエピソーがいっぱい。
さて、ここからたびたび『氷川清話』(講談社学術文庫 江藤淳、松浦玲 編)を元にしたお話が出てきますが、『氷川清話』はインタビュー本なだけに読みやすいんですが、やっぱり父親=小吉の話はほとんど出てきません。
最初に小吉について(らしい)くだりが出るのは、こちら。
それに親は、隠居して腰ぬけであったから実に困難したが、…
小吉、ひどい言われようです。まあ、立場上とか、経済状況で腰抜けなんであって、精神はそうでないと解釈したいですが…。
そんななか、今回のエピソードは、老父(小吉)が親しかったという「きせん院」という行者について。
名前は違うんですが、私は、この「きせん院」が、前回、前々回に登場した殿村南平だと解釈しました。
昔本所に、きせん院という一個の行者があつて、其頃流行した富籤の祈禱がよく当たるといふので、非常な評判であつたが、おれの老父が、それと親しかつたものだから、おれもたびゝゝ行つたことがある。
本所は、小吉が当時住んでいた場所です。南平は富くじの祈祷をしていました。「きせん院」は南平に違いない!
というわけで、南平さんが人妻とすっぽんににらまれて、占いが当たらなくなったというお話です。ドラマチックでも論理的でないのも、逆にリアルなエピソードです。
↑ちなみに老人バージョンの息子はこちら。
六十九話に続きます。話は小吉に戻ります。「小吉、人間を切る(仮)」です!