『夢酔独言』 三十三話 他流試合はいかが
小吉17歳、四谷伊賀町の平山行蔵先生を訪ねては、武器・武術見学をしたり、昔話を聞いたりして、一方では、剣術道場で伝授を二つもらいます。
しかしそんな現状に満足しない小吉は、当時一般的でなかった「他流試合」をしようと思いつきます。その提案に、将来剣豪となる甥の男谷新太郎は…。
このお話5ページ目の「弓の問答」というのは、「実際の戦場で兜をかぶった状態で弓は引けるか否か?」というものです。平山先生曰く、「引ける」とのことです。冒頭の源為朝の話は、その時言った内容です。
小吉と新太郎のやりとりは、創作です。小吉はこの年あたりから他流試合を始めるのですが、そのきっかけのやりとりを創造しました。
この場面で何となく新太郎に道場の掃除をさせましたが、男谷精一郎は実際、自らの道場の掃除をしていたそうです。偉いですね。
…翌年より伝授も二つ貰た。夫(それ)からあんまりたゝかれぬよふになつたからは、同流の稽古場へ毎日々々いつたが、大勢が知つてきて、小吉々々といふよふになつたから、他流へむやみと遣ひにいつたが、其時分はまだけん術が今のよふにはやらぬから、師匠が他流試合をやかましくいつた。
三十四話に続きます。