マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

和柄コレクション 型紙摺印判の幾何学模様と小紋

和柄コレクション 型紙摺印判の幾何学模様と小紋

 

 「型紙摺印判(かたがみすりいんばん)」とは、江戸時代中期に行われた、古伊万里の絵付け技法です。

 模様部分を切り抜いた型紙を器に当て、上から「呉須(ごす)」という顔料を乗せます。すると型紙に空けた穴から呉須が器に付着し、図案を写すというものでした。

 大量生産するための技法というよりも、精密な絵付けを、狂いなく器に施すための技法という向きが強かったようです。

 図案は、一般的な古伊万里のような花鳥画もありましたが、型紙を用いるため、細かい幾何学模様や、小紋模様が多く作られました。

 

 型紙摺印判は江戸後期には姿を消しますが、明治時代に、今度は大量生産を可能にするという特長を買われ、復活します。明治時代の型紙摺印判は、鮮やかなベロ藍(コバルトブルー)で絵付けされ、古典的な模様のほか、文明開化を表現した絵柄もありました。明治時代のものは、「型紙印判」とか、「明治印判」「印判手」と呼ばれます。

 その後、明治時代後半には、「銅版転写印判」技法が導入され、より精密な絵付けが可能になりました。図案はユーモアとバラエティーに富み、比較的安価なため、骨董ファンの間で人気のジャンルとなっています。

 

 …と、明治時代の印判まで解説しましたが、この記事では、江戸時代中期に作られた型紙摺印判の中で、特に幾何学模様と、小紋の模様を紹介します。

 

 

 

・放射に桜と亀甲f:id:hayaoki6:20190630113559j:image

 

  一見、300年前に作られたとは思えないモダンな小皿。よく見ると、桜や亀甲などの、和のモチーフで構成されています。

 

 

 

・陰陽花菱
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 色付き(陰)の花と、白抜き(陽)の花を交互に並べた模様。

 片辺が短く片辺が長い、ひし形に納まる花の模様を、「花菱(はなびし)」といいます。縦長の花菱もまれにありますが、横長が多いです。

 これは消しゴムはんこで再現したものです。元のお皿は、はやおきが財政難の時に、生活費になってしまいました…。

 

 

 

・玉付き襷(たすき)に三種の花菱

 


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 とてもモダンな模様。タスキとタスキの間の玉だけが手描きで、あとは印判です。

 ハート形の花びらがかわいい。

 

 

 

・菊小紋

 


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 ひたすら菊を並べた小紋。基本9枚花びらですが、一個だけ7枚花びらがあります。

 

 

 

・網襷に二種の花菱
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 小さい丸と、花芯を塗りつぶした部分が手描き。

 線画でない、塗りつぶしたような箇所を、「ダミ」といいます。

 ねじれているような花菱は、鉄線(てっせん)の花です。

 

 

 

・二種の花菱十字
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 元のお皿がどんなのだったか記憶にありませんが、記録に「型紙摺印判」とメモしてあるので、型紙摺印判の模様です。

 花火か、昔の模様ガラスみたいできれい。

 

 

 

・毛玉小紋
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  本当は毛玉ではないでしょうが、毛玉に見えます。

 丸の部分がダミ。

 原案になったお皿は、むちゃくちゃ高くて買えなかった…。

 

 

 

・藤襷に菊
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  全体的ににじんでいますが、凝った模様です。

 花の中心を薄いダミで埋め、斜めがけのタスキ部分を手描きで描いています。

 

 

 

・吹き寄せ小紋

 


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  いろいろな型紙摺印判の模様を、ギュッと濃縮したような模様。

 2枚目が消しゴムはんこで再現したものですが、密度が全然違います。

 

 

 

・松皮菱に花菱

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 元は型紙摺印判に違いないのですが、やはり高くて手が出せませんでした。

 ギザギザしたひし形が「松皮菱(まつかわびし)」。松の木の皮を図案化した模様です。

 

 

 

・水面に薄氷

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 単に細かい模様を組み合わせただけかもしれませんが、水面に浮かぶ氷に見立てました。実際、横縞部分のような水の表現は、この時代の古伊万里にあります。

 

 

 

・雁金小紋
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 5ミリ四方ほどの小さな雁金(かりがね)を、びっしり並べたもの。
 この形の器は「結び文型」といい、結び文型の器の半数は、型紙摺印判用と言ってもいいほど。骨董屋さんで見かけたら、チェックしてみてください。