小吉の女房
ドラマ『小吉の女房』1月11日(金)スタート!
NHKのBSプレミアムで、『夢酔独言』の主人公・勝小吉の妻、信(のぶ)を主人公にしたドラマ『小吉の女房』が、2019年1月11日(金)20時からスタートします。
BS時代劇「小吉の女房」
【放送予定】2019年1月11日(金)放送スタート!
毎週金曜[BSプレミアム]後8:00~8:43(連続8回)【作】山本むつみ
【音楽】荻野清子
【出演】沢口靖子、古田新太、鈴木 福、升毅、高橋和也、高橋ひとみ、石倉三郎、江波杏子、里見浩太朗 ほか
【語り】春風亭昇太
【演出】清水一彦、宇喜田 尚、井上泰治
【制作統括】 小林大児、内堀雄三、土屋勝裕
※NHK-PRより
山本むつみオリジナル脚本!英雄・勝 海舟を育てた型破りな夫婦の物語 BS時代劇「小吉の女房」 |NHK_PR|NHKオンライン
何を隠そう、2023年の勝海舟生誕200周年を目指して『夢酔独言』のマンガを描いていたところ、今年8月新聞記事でこのドラマが始まることを知り、急きょブログを立ち上げるきっかけとなった因縁のドラマなのです。
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息子が教科書に載っているとはいえマイナー人物な小吉なので、テレビ欄で名前が上から二番目に載るポジションというのは、変な動悸がするぐらいうれしいです。全八回だから、約二ヶ月間も楽しめますわーい!
ただ、ひとつ懸念が…。
時代劇が苦手
そもそも、テレビの時代劇はあんまり好きじゃないのです。
時代背景を再現することに大部分を取られてしまって、人情や浪花節はあるかもしれないけれど、「ドラマ」要素なんてほぼありません。登場人物も生きた人間というよりは、文字通り劇を演じる役者さんです。
もっと主人公のキャラがバリバリ立っていて、クスっと笑えるテンポのいい掛け合いがあり、適度なアクションもあり、スカッと爽快な話が好きなんです。
(それ時代劇じゃない…。)
肝心の時代背景も、日本髪はガッチガチに糊で固められてるみたいだし、簪(かんざし)とか当時ではありえなさそうな素材で出来てるし、着物も昔はあんなきっちりした着付けじゃないし、柄に至っては、江戸時代なのに9割方昭和以降のテイスト。※大河ドラマだと、すごい凝ってるのもあります。
うわああああ!!満足できない!
でも自分が時代物を描いているので興味はある。
そこで、わざわざ時代劇を見ては、食事処にイスとテーブルがあるのに文句を言ったり、着物の柄があり得ねえとくだを巻いたり、歪んだ楽しみ方をしているわけです。
とはいえ、時代劇のロケ地って限られているだろうし、小道具もホントに当時風にしたら映えないだろうし、衣装も呉服屋さんの都合があるんでしょう。そりゃあわざわざ時代劇のために一着一着型作って染めて仕立ててなんてしてられないよ!プリントで何とかなんないのかよ!カツラも右に同じ!
その縛りがないから、マンガの時代物は面白いんですよね。個人的見解ですが。
江戸時代の人妻なんか、実際は眉毛無くて歯が真っ黒なんですよ!忠実に再現したら、そこばっかり気になって集中できません。ベアト(明治初期の日本の写真を撮った人)もドン引き!
マンガ『夢酔独言』も、当時の生活風俗なんかはまあまあ表現できていると思うんですが、主人公の勝小吉は剣術の達人であるというのに、マンガ化担当が剣道未履修のため、試合のシーンがテキトウに次ぐテキトウ、雰囲気だけとなっています。剣道経験者の方が見たら、ひっくり返って激怒すること間違いなし…そこはいずれ調べて直しますので、今はご勘弁ください。
…と、ここまで来てはたと気が付きます。
そもそもが、時代劇を観る人が求めているのは、いわゆる日本の原風景と、人情そして浪花節じゃないでしょうか。センスや小道具が昭和寄りなのは、観る人が昭和育ちだからじゃないでしょうか?
そういう理由なら、時代劇の不可解さも、おおよそ納得がいきます。
江戸時代を忠実に再現したって、馴染みのない情景が出来上がるだけです。
アクションが観たい人は、ハリウッド映画を観ましょう。トム・クルーズ大好き。
というわけで、それらのことを踏まえて、ドラマ『小吉の女房』を健全に楽しみたいと思います。
史実と違うとか、信のキャラが変とか、そういう文句は垂れません。面白ければいいのです。
評判が良かったら、信の夫(小吉)もドラマ化されるかもしれないし。
マンガ『夢酔独言』での「小吉の女房」像
勝小吉の妻、もとい勝海舟の母親の信(のぶ)とは、実際はどんな人だったんでしょうか。
勝信は、小吉より2歳年下の1804年生まれで、1870年、明治三年3月25日に67歳で亡くなりました。
信についての資料は、私が把握している中では、彼女の夫が書いた『夢酔独言』と、勝海舟が書き残した文章の中、それから、信が書いたという手紙の文面が、「勝海舟全集」に収録されているぐらいです。
・『夢酔独言』の信
勝家の一人娘だった信は、早くに両親を亡くし、5歳の時、婿養子として男谷家から小吉を迎えます。
マンガではけっこう登場シーンがあるんですが、『夢酔独言』で信がピックアップされるのはたった一エピソードだけ、しかも小吉の不倫の話です。
そのくだりで「一日でもおれにたゝかれぬといふ事はなかつた」と記述があるので、その苦労ぶりがうかがえます。
また、そんな小吉に向かって「暇(=離縁)をくれ」と言ったり、「挨拶が悪ゐと私が死で、もらゐますから」と言うあたり、気が強い一面もあったようです。
・勝海舟が書いた碑文での信
信の死後、海舟は静岡県沓谷の蓮永寺に両親の墓を建て、裏に碑文を書きました。信についての箇所を抜粋します。
母の信子は勝甚三郎元良の長女で惟寅(=小吉)を婿に迎えたが、もともと貧乏旗本の上に武骨一辺で世事にうとい夫に仕え、ずいぶん苦労した。言葉数少なく、家事のやりくりをしながら、和歌を嗜み、書をよくし、明治初年の国家の大難には、母上は落ち着いて、大義の正しさを見失わず、一言も余計なことはいわず、私のすることを見守ってくれていた。この事は私の肺腑に深く刻んで忘れぬところである。
このくだりは、ドラマでやってくれるのかなあ。
マンガでは、やります。まだ描いてないけど。
・勝海舟にあてた手紙での信
「勝海舟全集」別巻1に、信から海舟(麟太郎)への手紙の文面が収録されています。
鳥渡申し入れ候。揃いかね候季かふに御座候。御障りなく御勤め成られ候御事、御めで度く御悦び申し入れ参らせ候。
この地にても変りなくくらし居り候。御心易く思しめし下さるべく候。
当月十八日に伴梅吉出立いたしたく申し上ぐべく候えども、もしおそなわり候やも相知れ申さざるがまま、申し上ぐべく候。当月十一日に山本覚太郎と申す長崎奉行支配調役下役の人出立に付き、この人に御申し越しの品々入れ置き候箱たのみ、差し出し申すべく候。
届き候わば、何か御有金のしな、礼さし遣わし候よう御頼み申し参らせ候。
品物は半分にて、いまだ残り居り候。御船出帆いたし申さず候まま、段々おそなわり参らせ候。又々よき便りたのみ置き候てもたせ上げ候つもりにて御座候。御申し越しの本、石共御座候に付き、当月末にさし出し候つもりにて御座候。呉々よろしく申し上げ出で参らせ候。あらゝゝめでたく かしく
尚々、時かふ、御いとい御勤め成られ候よう御念じ申し参らせ候。御留主中、何事も御座なく候まま、御心易く思しめし下さるべく候。あらゝゝめでたく かしく
七月十六日 したゝめ
麟太郎殿 御返事 母より
文章はめちゃくちゃ堅いんですが、母親から息子にあてた手紙ならではの、どこかキャピキャピした感じがあります。
・まとめ
以上の資料から、私は信を、
・無口で喜怒哀楽を表に出さない
・芯が強く、落ち着いている
・教養があるが愛嬌はない
・どこかすさまじいところがあり、執念深く小吉と添い遂げようとしている
というキャラクターにしています。
人それぞれ、思い描く信像は違うはずです。
私は、マンガ『夢酔独言』が面白ければそれでいいのだ、です。
ドラマ『小吉の女房』はNHKのBSプレミアムで、2019年1月11日(金)20時から放送スタートします。
第一回のサブタイトルは「旦那様は就活中」!
皆さん観てくださいね。