『夢酔独言』 四十五話 無一文だから吉原へ行こう
小吉は20歳になりましたが、相変わらず他流試合にケンカに吉原三昧で、付き合いのために借金ばかりしていたら、とうとう無一文になってしまいました。こうなったら、現実逃避に吉原へ行くしかありません。
2ページ目に「しだらのねえ」というセリフがありますが、「だらしない」と同じ意味です。昔誰かが「しだら」をひっくり返して、戻らなくなりました。
小吉が3ページ目で着ている着物の、ハエ叩きみたいな模様は馬具の一種、轡(くつわ)です。クツワという文房具の会社がありますが、あそこのマークも、この轡になっています。
相変わらずのダメさ加減の小吉。信(のぶ)が出てくるくだりは創作ですが、借金をしまくってたのは原作通りです。妻なのに、信は原作に全然登場しません。
ちなみに、小吉が信を「肌が冷たそう」と言っていますが、江戸時代から、女性は肌の温かいのが良いとされていたらしいです。
夫(それ)からいろゝゝ馬鹿斗り(ばかり)していたから、身上がわるくなつてきて、借金がふへる斗り(ばかり)。しかたがなゐから、できない相談で、むやみに借金をしていたが、二十一の年には一文もなくつて、しよふがなかつたから、さし料の刀は、終屋久米右衛門といふ道具より買つた盛光の刀、四十一両で買た故、夫(それ)を売かとおもつたが、夫(それ)も惜しいからよしたが、逢対にいくにも着たまゝになつたから、気休めに吉原へいつた。
…いや、行くなよ。生活力が無さ過ぎる…。
無一文になっても刀は売らないのに、吉原へは行く小吉。期待を裏切りません。
四十六話へ続きます。