『夢酔独言』 九十二話 怖くって名も呼べぬ
吉原の仮宅にて銭座(鋳銭所)の息子とケンカになり、店の2階から息子を放り投げた小吉。銭座勢一同が長鉤を持って押し寄せて、大ゲンカがスタートします。
長鉤を持った30人に対し、刀を抜いて互角に闘う(本人談)小吉ですが、脚気をわずらった足が痛みます。
今回のお話は、ほとんどフィクション演出です。ただただ小吉が、銭座の皆さんと叩き合ってるだけ。
はやおきはアクションシーンが好きなのです。巧いかどうかは別として…。
原作該当箇所は以下の通りです。
…熊を二階から下へなげ出してやったが、其時銭座の手代が二、三人来て、熊を連て帰たが、少し過ると三十人斗り(ばかり)長かぎで来て、佐野槌屋をとり廻(ま)いたから、おれがはだをぬいでじゅばん壱つ(ひとつ)で、高もも立を取て飛び出して、たたき合たが、…
今回は試みに、原文の旧仮名遣いの部分を現代風に変えてみました。
送り仮名を足したりマイナー漢字を常用漢字にするだけでも、もっと読みやすくなるとは思うのですが、試しに送り仮名を足してみると、むちゃくちゃまどろっこしく感じるんですよ!いつもはしょってるから!
(原文)…熊を連て帰たが、少し過ると、…
(アレンジ)…熊を連れて帰ったが、少し過ぎると、…
それに、すごくフツーっぽい文章に見えてしまう…。
今日の解説コーナー。
・山の宿の女郎屋「佐野槌屋」
→天保八年の大火で吉原が焼けて、仮の見世を山の宿で営業していたのが佐野槌屋です。小吉の行きつけの見世でした。
・手代(てだい)
→時代劇でよく聞く単語。商家の万事を取り仕切るのが番頭、次のポジションが手代、雑用係が丁稚(でっち)でした。
ちなみに「丁稚」と「でっち上げ」の間には、何の関係もないそうです。
・高股立(たかももだち)
→袴の両端の切れ込み部分を帯にはさんでたくし上げ、動きやすくした状態。
・脚気(かっけ)
→ビタミンB1不足により、足が痛んだり、だるくなる病気。「江戸患い」とも呼ばれ、小吉もかかっていた。
・小吉の服
→本人はカッコいいと思って着ているが、はやおきはそのセンスを微妙と思い始めた。
・アクションシーン
→テキトウだから原理とかを真に受けてはいけない。
九十三話「直に戻って来おるぜ」に続きます。