勝小吉自伝『夢酔独言』より、小吉14歳、一度目の家出エピソード最終回です。
ペン入れ&セリフ入力出来次第、順次公開していきます。
あと、試しにデジタルでトーンを貼ってみました。あくまでイメージです。
ペン入れするにあたってはやおきの理解をより深めるために原作の該当箇所を文章で打っておきますが、ネタバレをこうむりたくない方は、見ないようにしてください。
三日目に朝早く起きて、家へ帰ったが、家中、
「小吉が帰った」
と言って大騒ぎをし、おれは部屋へ入って寝たが、十日ばかりは寝通しをした。
おれが居ないうちは、加持祈禱いろいろとして従弟女の恵山という比丘は上方まで訪ねて上ったとて話した。
それから医者が来て、腰下に何と仔細があろうとていろいろ言ったが、その時はまた金玉が崩れていたが、強情に、
「ない」
と言って隠してしまったが、み月ばかり経つと、湿ができてだんだん大層になった。起き居もできぬようになって、二年ばかりは外へも行かず、家住まいをしたよ。
それから親父が、おれの頭(かしら)の石川右近将監に、帰りしよしを言って、
「いかにも恐れ入ること故に小吉は隠居させ、他に養子をいたすべき」
と言ったら、石川殿が、
「今月帰らぬと月切れ故、家は断絶するが、まずまず帰ってめでたい。それには及ばぬ。年取りて改心すれば、お役にもたつべし。よくよく手当てしてつかわすべし」
とて言われた。それで一同安心した、と皆が話した。
※はやおきによる現代仮名遣いで引用