マンガで読める『夢酔独言』

マンガで読める『夢酔独言』

勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 二話「古傷のゆえん」

  勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』二話目です。

 主人公の小吉が、5歳の時の話です。

  近所の子供と凧ゲンカをして、負かした小吉。子供同士のケンカになって相手にケガをさせた小吉は、怒った父親に「 頭をぶちやぶられ(原作ママ)」ます。

 

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…おれは妾の子で、母親が親父の気に違って、お袋の家で産まれた。それを本当のお袋が引き取って、乳母で育ててくれたが、ガキの時分より悪さばかりして、お袋も困ったということだ、と。それに親父が日勤の勤め故に、家には居ないから、毎日毎日わがままばかり言うて、強情故皆が持て扱った、と用人の利平次という爺が話した。

 その時は深川の油堀という所に居たが、庭に汐入の池があって、夏は毎日毎日池にばかりへ入っていた。八つ(午後二時)には親父がお役所より帰るから、その前に池より上がり、知らぬ顔で遊んでいたが、いつも親父が池の濁りているを、利平爺に聴かれると挨拶に困ったそうだ。お袋は中風という病で、立ち居が自由にならぬ。あとは皆女ばかりだから、馬鹿にして、いたずらのしたいだけして日を送った。兄貴は別宅していたから、何も知らなんだ。

※ 『夢酔独言』よりはやおきによる現代仮名遣いで引用

 

 

 

 この時の小吉の名前は、亀松(かめまつ)といいます。いわゆる幼名(ようめい、幼少の時の名前)です。

 男谷の家の庭には汐入の池しおいりのいけ、海水を引いた池)があって、夏には、お父さんが仕事のあいだ、毎日池に入って遊んでいたそうです。 

 冒頭、亀松が泳いだために池がにごるんですが、お父さんが帰るころにはバレないように、池から上がります。帰ってきたお父さんが「どうして池がにごっているのだ」と用人の利平次に聞くんですが、利平次は答えられなくて困る、というくだりです。

 

※男谷の家は旗本という、一万石以下、直参(じきさん・将軍家直属の家臣)、御目見え以上の武士でした。用人とは、大名や旗本の家で、庶務、会計などにあたった職の人です。

 

 

 

 男谷家のメンバーはこんな感じ。

 

 ・お父さん:男谷平蔵・・・二話現在50歳

 ・妻:・・・中風で寝たきり(マンガでは動いてもらっていますが…)

 ・用人:利平次・・・「利平爺」と小吉に呼ばれている

 ・家来:女ばかり

 ・主人公:亀松・・・冒頭時4歳、年が明けて正月5歳

 ・お兄ちゃん(別宅):男谷彦四郎・・・二話現在30歳

 

 小吉(亀松)はお父さんが45歳の時の子供で、長兄の彦四郎さんは、小吉より25歳年上です。

  小吉はお父さんのの子で、その女性がお父さんの機嫌を損ねたため、父親の男谷家でではなく、女性の実家で産まれました。小吉はお父さんの正妻である清を、「本当のお袋」と表現しています。ただ、それぐらい慕っていたとかではなく、立場上当たり前にそう捉えたのでしょう。

 

 

 

 そんな男谷家で、亀松は「毎日毎日わがまばかりいうて」、「いたずらのしたいだけして」、「暴れ放題」育ちました。 

 

 

 

 亀松5歳の時、近所の長吉という子と凧喧嘩(たこげんか)をします。凧喧嘩とは、揚げた凧の糸を上空で絡ませ、切る遊び。糸を切られた方が負けです。

 マンガではすさまじいことになっていますが、その顛末は、だいたい原作通りです。

 

  おれが五つの年、前町の仕事師の子の長吉というやつと凧喧嘩をしたが、向うは年もおれより三つばかり大きい故、おれが凧を取って破り、糸も取りおった故、胸ぐらを取って、切り石で長吉の面をぶった故、唇をぶちこわして、血がたいそう流れて泣きおった。そのときおれの親父が、庭の垣根から見ておって、侍を迎に寄越したから、家へ帰ったら、親父が怒って、「人の子に傷をつけて済むか、済まぬか。おのれのようなやつは捨て置かれず」とて、縁の柱におれをくくして(くくりつけて)、庭下駄で頭をぶちやぶられた。いまにその傷がはげて、くぼんでいるが、月代(さかやき)を剃るときは、いつにても剃刀が引っかかって、血が出る。そのたび長吉のことを思い出す。

 

 一話目、小吉の額に傷跡があったのは、この時ついたものでした。

 

 意外なのは、町人の子と武士の子が一緒に遊んでいること。

 その様子をお父さんが庭の垣根から見ている、というのは、何ともほほえましいです。そのあとぶん殴るんですけどね。※マンガでは都合上、土手の垣根となっています。

 

 

 

  原作ではこのあと、以下のような文章が続きます。

 

 お袋がほうぼうより来た菓子を仕舞っておくと、(亀松が)盗み出して食べてしまう故、ほうぼうへ隠しておくを、いつも盗む故、親父には言われず、困った。一体(いったい、そもそも)はお袋がおれを連れて来た故、親父には、みんなおれが悪いいたずらは、隠してくれた。あとの家来は、お袋を恐れて、親父におれがこと少しも言うことはならぬ故、暴れ放題育った。

 

※原作に、よく「○○が~」という表現が登場しますが、「○○の~」と同じ意味です。普通に「○○の~」という表現もされます。