和柄コレクション 桜の和柄① 古典
和柄の代表格のひとつ、桜。春の季語ですが、春に限らず、また男女問わず、さまざまな模様やモチーフと組み合わされます。
この記事では、絵草子、古伊万里、型染木綿など、江戸~明治時代の古い物に描かれた桜の模様を紹介します。
・絵草子、流水桜
ちょっと花の形に深さがあるのでモクレンっぽいですが、桜として紹介します。
桜は咲くと同時に散り始めるので、散る様も絵になります。
江戸時代の和綴じ本の表紙に使われていた図柄です。横長にぐるぐる巻いた水の表現は「観世水(かんぜみず)」。観世太夫の紋所に使われたので、この名称になりました。
・こんにゃく印判、桜
両方とも、江戸時代中期のこんにゃく印判の桜です。別々のお皿ですが、同時期の模様なので、桜のデザインはまったく一緒です。このように、丸みを帯びたハート型の花びら5枚で表現されました。
こんにゃく印判は、牛革のような柔らかい素材で判を作り、器に図柄を捺す技法です。同じ模様を何個も付けることができました。2枚目は「桜に鳳凰丸」ですが、判の補強のため、鳳凰の羽根のところにつなぎの線があります。
・藍九谷様式皿、蝶の輪に桜
ちょっと見にくいですが、こんにゃく印判の器と同時期なので、やっぱり花びらは丸みを帯びています。
・型染木綿、桜に燕と二崩し
桜に燕、春らしい模様です。くるくるとした点描の糸模様もあって、繊細で優美。
長方形が二つ並んで縦横互い違いになっている模様を、「二崩し」といいます。曲線ばかりのこの模様を引き締めています。
・型染木綿、鱗に桜
三角を互い違いに重ねた模様を「鱗(うろこ)」と呼びます。能(のう)の一種・道成寺で嫉妬に狂ってヘビに変身した清姫の衣装として使われました。これは、定番の和柄に桜を添えたパターン。
・地白型染、桜に団扇
夏を表す団扇に春の桜、秋に咲く萩に菊、松、竹、と、豪華欲張りな模様です。
塗りつぶされた桜の中をよく見ると、梅の花が。松竹梅の完成です。
・地白型染、葵と桜
ハート形の2枚セットの葉っぱが葵、黒い縁取りの葉に小さく付いているのが桜です。桜の花は、ひとつ5ミリほど。葵の葉っぱの中には、桜、菊、松と、季節の植物が描かれています。
・型染木綿、桜に栞
桜メインの柄。木製板状の、古めかしいタイプの栞とともに。
・地白型染、轡(くつわ)と桜
馬は、桜とよく組み合わされるモチーフです。轡は馬の暗示。
・型染木綿、桜に井桁
正確には「格子(こうし)」模様でしょうが、「井」の部分が強調されています。わずかに開ききっていない、丸みを帯びた桜の花です。藍、白、黒の組み合わせで、色の付け方に変化を出しています。