『夢酔独言』 五十話 元居候の家に居候
二度目の家出をした小吉、昔江戸で面倒を見た、中村帯刀の家に転がり込みます。とはいえそこに長居する気もなく、性懲りもなく上方(かみがた)へ行こうと思う小吉。ところが、帯刀の家に旅の剣術遣いが現れて…。
前半の、小吉の妻についてのセリフと、江戸でのお兄ちゃんの小吉についてのセリフはフィクションです。小吉はそんな人間味のあることは言ってませんし、お兄ちゃんはそこまで冷血なことは言ってません。思ってたかもしれませんが。
そしてまたまた性懲りもなく、上方へ行こうとする小吉。
今ではすっかり日本の首都、当時でも世界最大級の人口過密都市だった江戸ですが、由緒があり、天皇が住まわれているのは京都。武士である小吉にとっては、あこがれの土地だったに違いありません。結局、その後も小吉が京都に行ったという記録は、ありませんが。
…近所の剣術遣ひへ遣ひにゆくやら、いろゝゝすきのことをして遊んでいたが、其内弟子が四、五人出来て、毎日々々けいこをしていたが、しょせんこゝにながくいてもつまらぬ故、上方へゆかふと思つたら、…
五十一話に続きます。