『夢酔独言』 百二話 家を出まする
息子・麟太郎の出世の道が閉ざされたショックで小吉が暴れ、麟太郎所有の本を破ってしまいました。その後、男谷家にて、麟太郎とその従兄・精一郎さんの会話です。
弟子入りを望む麟太郎(16歳)に、精一郎さんは「よりふさわしい人がいる」と答えます。その人物とは…男谷道場にて、弟子入りからわずか一ヶ月で免許皆伝になった男、島田虎之助!
今回のお話も、前回と同様、『夢酔独言』にはないエピソードです。
麟太郎が、16歳~19歳まで、島田虎之助の元に寄宿していた話(『氷川清話』)に依ります。小吉が37歳で隠居した年(天保九年、西暦1838)の話です。
マンガでは小吉が暴れたので出ていった、みたいな演出ですが、実際は小吉が麟太郎に剣術を習わせようとしたようです。そのワリには小吉は島田さんと面識がなかったようで、小吉が精一郎さんに頼んで、精一郎さんが島田さんに頼んだか、紹介したという流れが本当のところかもしれません。
小吉は百話目でちょんまげを切り、剃髪しています。これからコロコロ髪型が変わりますが、「ちょんまげでない人=小吉」と思っていてください。
9ページ目の麟太郎のセリフは、
剣術の奥意に達した人は、決して人に斬られることがないということは、実にその通りだ。おれも昔親父からこの事を聞いて、…
という勝海舟の言葉から来ています。(『氷川清話』より現代仮名遣いで引用)
最後のコマに登場するのが島田さんです。名前に「虎」が付くので、そのまんまトラをイメージしたビジュアルとなっています。
実際の島田虎之助は、額が広く頬骨の出た顔で、鼻は高く目のくぼんだ中肉、中背だったそうです。
百三話「おれをはめたは誰か」に続きます。次回から、話は『夢酔独言』に戻ります。