マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 百三十五話 剣術の世の終わり

『夢酔独言』 百三十五話 剣術の世の終わり

 

  天保九年(西暦1938)、春

 息子・麟太郎の出世のために隠居したのに、出世のあてがなくなって、落胆する小吉。麟太郎は剣術修行を始めます。

 はじめ麟太郎は親類の男谷精一郎に弟子入りを願い出ていたのですが、精一郎さんの勧めで、島田虎之助の弟子になりました。

 今回のお話は、その前日談と後日談です。

 

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 ※会話のシーンで急に外に出たりしていますが、イメージ映像です。実際には、お部屋で向かい合って喋っています。ただの演出なので、気にしないでください。

 

 

 

・ダイジェストで振り返るこれまでのお話

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息子・麟太郎の元主が一橋家の当主に。麟太郎にも出世のチャンス。


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ところが出世のあてがなくなり、

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荒れる小吉。


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麟太郎は剣術修行へ。小吉の甥、男谷精一郎さんに弟子入りを申し込みますが…
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島田虎之助さんの弟子になることに。


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「今時皆がやる剣術は型ばかりだ」(伏線)

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島田さんを吉原に連れて行って、飲酒・喫煙を強要する小吉。

 

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「英国製の砲弾が撃ち込まれたら、剣術では通じない」と、やたら未来を見通した発言をする麟太郎。


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修業を頑張る麟太郎。


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急に蘭学を勧められる。

 

 

 

 …で、今回のお話は、精一郎さん(男谷精一郎麟太郎(勝海舟の剣術の師匠に島田さん(島田虎之助をあてがい、島田さんが麟太郎に蘭学をすすめたいきさつの回答編のようなものです。史実をストーリー仕立てにした演出話です。

 

 

 

 絡んでくる史実の解説をしましょう。

 

・モリソン号事件(天保八年・西暦1837)

 日本人漂流民を送還し、通商を求めて浦賀に来航したアメリカ船モリソン号を、幕府は異国船打ち払い令によって砲撃、追い返した。高野長英渡辺崋山らがこの事件を批判し、蛮社の獄蘭学者への弾圧)の原因となった。

 小吉が隠居する前年。マンガでは、麟太郎は柳亭種彦の家でモリソン号の読み売り(瓦版)を見た。実際は柳亭種彦に教えられたわけでないが、勝海舟はこのことについて知っていた。

 

異国船打払令(文政八~天保十三年・西暦1825~42)

 無二念打払令とも。外国船は見つけ次第打ち払い、上陸すれば捉えて殺せ、という幕府による外国船追放令。

 18世紀末より外国船の来航が増え、船員の上陸・強盗事件が発生したため、その対策として。

 麟太郎が生まれた2年後から、20歳になるまで続いた。

 

アヘン戦争天保十一~十三年・西暦1840~42)

 アヘンの輸入をめぐって起こった、イギリスの清国侵略戦争。イギリスのアヘン密輸により、保健上の害と大量の銀の流出を憂いた清国政府が、アヘンを没収・焼却し通商を禁止したために開戦。清国は破れ、西洋列強による中国半植民地化へと進む。

 

 

 

 ここまで真面目に読んでくださった方はピンとくるかもしれませんが、かく言う私もムズかしそうな部分は飛ばして読むタチなので、かいつまんで説明すると、

 

 18世紀末から、外国船がたびたび日本にやって来て、乗組員が上陸したり、ひどい場合は強盗もしたフェートン号事件:文化五年、西暦1808)。で、幕府は異国船打払令(1825~)でもって外国船は有無を言わさず追い返すことにした。そんな中起きたのが、モリソン号事件(1837)。ところがアヘン戦争(1840~42)で清国がイギリスに負けて一方的な講和条約を結ばされたため、幕府は打ち払い令を廃止(1842)天保の薪水給与令(外国船に燃料・食料を与える)に改めた。

 

ってことです。

 

 で、かつて小吉と一緒に浅草寺に行ってケンカしたり、家出した小吉を迎えに行ったり、「絶食して死ぬ!」とか言ってゴネる小吉を説得していた男谷精一郎さんは、この一連の時勢を見て、武術訓練の必要性を幕府に訴え、これを老中・阿部正弘が採用し、講武所が開設されました。

 精一郎さんは講武所頭取兼剣術師範役を務め、後には麟太郎(勝海舟も教授を務めました。

 

 という訳で、マンガではやたらと時代を先取りした発言をしていますが、マンガの舞台は1838年で、さすがの精一郎さんもそこまで考えていなかっただろうというのが正直なところです。どちらかというと剣術に特化した人なので、蘭学云々発言も、してなかったでしょう。

 でも読むのは未来を知った人なので、端的に当時の時代背景語り役になってもらいました。

 

 かくして(半ばムリヤリ)、男谷精一郎から島田虎之助へ、島田虎之助から勝麟太郎へ、蘭学の灯が渡されました。

 

 次回から、いよいよ勝麟太郎蘭学開始!

 百三十六話「西洋の匂い」に続きます。

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