『夢酔独言』 百一話 小吉の乱心
37歳の春、あまりに素行が悪いせいで、隠居した小吉。あとは麟太郎の出世を見守るばかり、と思っていましたが、頼みの綱の麟太郎の元主(もとあるじ)、初之丞様が亡くなられます。
がっくり落ち込む小吉…だったらまだよかったのですが、がっかりを通りこして、暴れだします。
「急に出てきたこの坊主の人誰!?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、小吉です。隠居したので剃髪しました。
小吉の息子・麟太郎は7~9歳の時、11代将軍家斉の孫・初之丞様のお相手として、江戸城大奥で暮らしていた時期がありました。年月が経ち、その初之丞様が元服した折には、麟太郎を家臣にという話が出ていたのです。
ところが小吉が隠居した矢先、慶昌(初之丞)様が死去。麟太郎の出世のつては、なくなってしまいました。
小吉が暴れるくだりは『夢酔独言』には無く、フィクションです。
このお話は、当初慶昌様が亡くなった年代を間違えていたため、急にこしらえてねじ込んだもので、やや絵がラフになっています。
信がひきつけを起こしたのは、後年、麟太郎の知り合いが勝家を訪ねた時、実際信がひきつけを起こしたエピソードに由来します。
百二話「家を出まする」に続きます。「このイガグリ頭のおじさん誰!?」とお思いになるかもしれませんが、小吉です。