『夢酔独言』 三十八話 道中は賊ばかり
小吉18歳。信濃へ兄のお供で赴任中、江戸で母が亡くなったとの知らせが来て、小吉・彦四郎は江戸へ帰ることに。
帰りの道中には、馬方に紛れた牢抜け男、無礼な老中、酒乱の剣術遣いと、物騒なやつらばかり。
道中の大小の事件は、だいたい原作通りです。物騒過ぎる。
…信州の追分で、夕方、五部月代の野郎が、馬方の蔭にはゐつて下にいたが、兄が見付て、おれに、「とれ」といふから、かごの脇より十手を抜ゐて、かけ出したら、其野郎は一さんに朝間山の方へ逃げおつたから、とふゝゝおつかけて近寄たら、二尺九寸の一本脇差をそりかへして、「御役人様。御見のがし被レ下(くだされ)ませ」といつたから、「うぬ。なに見のがす物だ」とそばへゆくと、其刀を抜きおつたが、(中略)おれが直に(すぐに)飛びこんで、柄を持て宙がへりをしたら、野郎も一所にころんで、おれの上になつたが、…
柄を持って宙返りとか、本当かなあ。小吉は、捕らえたこの男の刀をお兄ちゃんからもらっていますが、証拠品の横領じゃないのか…。
三十九話に続きます。