マンガで読める『夢酔独言』

マンガで読める『夢酔独言』

勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 百三十話 地球中の小国

『夢酔独言』 百三十話 地球中の小国

 

 天保十四年(西暦1843)、夢酔(=小吉)がついに『夢酔独言』を書き始めます。一方、世界地図を目にする麟太郎(後の勝海舟)。その時の感想は、意外なものでした。

 

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 今回の小吉のモノローグは、勝小吉の自伝『夢酔独言』の冒頭と結びから取ったものです。中身は小吉の破天荒な半生を綴った自伝ですが、冒頭と結びは、一応反省文になっているのです。

 マンガに載せている部分を、はやおき訳します。

 

 この一両年、外出を止められて、毎日毎日、いろいろの著述・物の本・軍談や、ご当家(徳川家)のご実記を見たが、そうして初めて知ったことがある。

 昔より名大将・勇猛と言われる人でも、乱世・治世に関わらず、あるいは強引をして、あるいは悪い法を用い、あるいは傲慢にし、女色に溺れれば、皆々天罰を受けて身を滅ぼし、家名や国をも失うものだ。

 では、おれはどうか。

 贅沢や、法外なことや間違いばかりして、それを英雄豪傑と思い込んでいた。

 肝心の旦那(徳川将軍)へは不忠至極、組頭へはいつも敵対した。養家の勝の家は代々勤め続いていたが、おれ一人勤めないで、家名に傷をつけた。

 親類、父母、妻子まで、どれだけ苦労をかけただろうか。

 この歳になって初めて、これまでの自分の所業が恐ろしくなった。

 

 これまで「学問は嫌い」という理由で読み書きを拒んできた小吉ですが、いざ本を読んでみると、素直なもので、自分の間違いに気付いたようです。

 原作を読んでちょっと意外だったのが、小吉が「英雄豪傑だと思って」いろいろアウトローなことをしてきたというところ。完全に勘違いではあったわけですが、小吉なりに、「いいこと」と思っていたようです。

 

 

 

一方、小吉の息子・麟太郎「万国地図」を見ます。

 この時のことは、勝海舟自身がはっきりと書き残しています。

 

 私は十八歳の時、「万国地図」を見て、おおいに驚いた。この世界に生を受けて、わずか一国に従うというのは、決して立派な男子の考えではない。世界中を回らずにいるのは、人である甲斐もない。

 また横文字と言っても我らと同じ地球人の書いたものだ、決して読めないはずがない。

 私は出世の道に望みは無いけども、ただ生きているうちに、学術を修業しようという思いを、ますます強くした。

※『勝海舟と勝小吉 「父子鷹」の明治維新』記載箇所を、はやおき訳で引用

 

 さすがその後実際オランダ語を習得してアメリカへ行く勝海舟なだけあって、父親と違って視点がグローバルで前向きです。

 これは今日(こんにち)では、勝海舟だけが持っていた気質に思えがちですが、実は、当時の日本人は、未知のものに対して「自分でも出来る」と思う傾向がありました。勝海舟もお世話になった長崎海軍伝習所の教師・カッテンディーケは、「日本人は知らない技術を見ると、自分にも出来ると高を括る性質があった。実際、彼らは表層上会得するが、すぐわかった気になって、習うのをやめてしまう」というようなことを語っています。まあ、そうでなくては、文字や鉄砲を自国開発したりできません。

 

 ちなみにマンガでは出番納めということで、小吉の友達で小説家の柳亭種彦さんが万国地図を麟太郎に見せていますが、実際にはそういう記録はありません。友情出演です。

 

 

 

 百三十一話「父のあきらめ、息子の功名心」に続きます。地元から離れた小吉一家の新生活です。『夢酔独言』晩年編最終話まで、あと二話です。

 

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