はやおきが所有する絵草紙『童謡妙々車』。
内容はさっぱり読めないのですが、その精密な作画と「車」テーマで統一された口絵がとても好きです。
一編が上下巻に分かれていて、2~4冊がまとめて綴じ合わせられています。その表紙に、発売当時本が入れられていたであろう袋も一緒に綴じられているのですが(上下巻一緒に販売されていたのか、袋に上下の記載はありません)、その袋の図柄もまた、「車」がテーマになっているのです。
今回は、『童謡妙々車』の袋の図柄について紹介・解説します。
どの袋にも、全体に布目摺り(実際に布を押し当てて、織物のような質感を加える技法。インクは使わない)が施されています。
初編
初編は車に関係ない図柄。
鶴と松竹梅で、めでたいモチーフ尽くしです。
三編
玩具の風車。
四編
お祭りの山車のような…。
車の上に載せられている装置には干支を表す漢字が12字書かれており、中に針らしいものが見えます。方位磁石か、時計を表したもののようです。手回しレバーが付けられています。
山に蔦とか、「紅英堂」は、版元を表しています。
五編
汐汲みの桶が二つ、台車に載せられています。
調べてみると、能『松風』に登場する小道具のようです。
七編
鯉のぼりの吹き流しのようですが、車はどこに…緑の丸がそうかな。
編不明(九編)
どう見てもハムスターの飼育セットですが、そんな訳ないので何だろう。
十編
花籠を載せた車。「花車(はなぐるま)」と称されるモチーフです。
十一編
手回し扇風機。
十二編
張り子の桜と、水流を表現するための装置。
歌舞伎『妹背山婦女庭訓』に、同じような装置が登場します。
張り子や装置と分かるように、裏側の構造を見せて書いているのが親切です。
十三編
玩具の車。鰹かな。
十四編
蒸気船。
この袋に入っていたであろう十四編下の巻末予告に文久二年(西暦1862)とあるので、その頃の世相を反映したものと思われます。
船を囲んでいる枠も、西洋風。