『夢酔独言』 五十八話 亥の日講
小吉、26歳の冬。
吉田神社の神主・吉田兵庫に「亥の日講(こう)」のメンバーを募ってほしいと頼まれた小吉は、武士から町人、百姓まで、1年半で150余人集めます。
いよいよ亥の日講が催され、講中(こうちゅう=講のメンバー)が集まっての宴会開始。ところが、その席での吉田兵庫の振る舞いが気に入らない小吉は、仲間を連れて途中で帰ってしまいます。友達の説得の末、翌日仕切り直しになり、小吉も会場へ向かいますが…。
冒頭、小吉と友達が食べているのは、江戸時代、実際にあった料理「あんかけ豆腐」です。小吉はこのシーンに限らずずっと箸の持ち方が変ですが、キャラ付けと思って温かく見守ってやってください。
今回は、小吉が近所の神主に頼まれて、「講」という信仰サークルのメンバー集めをし(その間にさらっと一年半経ちます)、「メンバーも集まったからイベントやって飲み会もしよう!」というお話です。
夫(それ)から講中がだんゝゝ来ると、酒肴で跡で膳を出して振まつていると、兵庫めがいつか酒に酔て居おつて、西の久保で百万石ももつた面をしおり、おれが友達の宮川鉄次郎というに太平楽をぬかしてこき遣ふ故、おれがおこつてやかましくいつたら、不法の挨拶をしおる故、中途でおれが友達をみんな連て帰つた。
おおむね原作通りです。信の登場するくだりは原作にはありません。この時小吉28歳、息子の麟太郎はまだ7歳ですが、なぜ家を出ているのか…。
ゴネて家に帰った小吉、みんなになだめられて翌日、仕切り直しに出かけます。
おれがいふには、「夫(それ)は不レ残(のこらず)承知したが、外の者へ能ゝ(よくよく)口留をしなさへ。若も(もしも)きのふの咄しをしたやつが有ると、其時は世話人がうそつきになるから、片はしより切て仕舞(しまう)つもりで来たから、能々いゝきかしておきなさるがいゝ」とて情をこめて帰した。
また、すぐ「切る」とか言う…。
五十九話に続きます。