マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 五話「百物語」

  勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』の五話目、小吉が8歳の時の話です。

 深川油堀から引っ越した一家は、駿河の屋敷を借ります。屋敷のとなりに寂しげな草原があるのを利用して、小吉の父・平蔵は家来もみんな集めて肝試し大会を催します。夜中、草原に立てた人形に目を付ける役が当たった小吉。無事に帰ってこられるのか…。

 

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 冒頭の、原作の該当箇所はこちら(はやおきによる現代仮名遣いで引用)。

 

 深川の屋敷もたびたびの津波故、本所へ屋敷替えを親父がして、普請(土木工事)の出来るまで駿河台の太田姫稲荷の向う、若林の屋敷を当分借りていたがの。その屋敷は広くって、庭も大層にて、隣に五、六百坪の原があったが、化け物屋敷と皆が話した。

 

 四話目まで深川油堀に住んでいた男谷家(勝家の婆様と信を引き取り、そこへ小吉が養子入りした状態)でしたが、本所へ引っ越します。深川で家を建てている間、一家は駿河の屋敷に身を寄せます。

 

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位置関係こんな感じ。

左下が深川油堀(ら辺)、右上が駿河台です。

 

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駿河台ズーム。

「イナリ」が太田姫稲荷で、となりの「フカ林」が「若林」…と読めなくもないです。

 

 

 

 冒頭、男谷家の用人・利平次が小吉を「坊っちゃん」から「若旦那」と言い換える場面がありますが、これは小吉が男谷家の子供から、勝家の当主になったことを表しています。

 

 ちなみに五、六百坪はどれぐらいの広さかというと、ひと坪約3.3平方メートル×間をとって550=1815…約2平方キロメートルです。東京ドーム約40個分(漫画では、そうとは知らず、ちょっとした広場程度に描きましたが…)。計算ミスかもしれません、数学の偏差値30ぐらいだったんで…。

 

 

 

続く百物語のくだりはこちら。

 

 おれが八つばかりの時に、親父が家中の者を呼んで、その原に人の形を拵て、百物語をしろと言った故、夜皆がその隣の屋敷へ一人ずつ行って、かの化け物の形の袖へ名を書いた札を結び付けてくるのだが、皆が怖がって、おかしかった。一番終いにおれが行く番であったが、四文銭をみがきて、人の形の顔へ目に貼り付けるのだが、それがおれが番に当たって、夜の九つ半(一時)ぐらいだと思ったが、その晩は真っ暗で困ったが、とうとう目を付けてきたよ。皆にほめられた。

 

 小吉のお父さんが、家中の、おそらく家来も含めた皆を集めて、百物語の会を催します。人形を準備したり、名前の札を結びつけて帰ってくるといったレクリエーションの企画を考えていたのを想像すると、ほほえましいです。

 

 

 

 後半、お姑さん関係のくだり。

 

 おれが養家の婆あ殿は、若い時から意地が悪くって、両親(許嫁・信の両親)もいじめられて、それ故に若死にをしさったが、おれを毎日毎日いじめさったが、おれもいまいましいから、出放題(好き勝手)に、悪態をついたが、その時親父が聞きつけて、怒っておれに言うには、

「歳もゆかぬに、婆様に向かって、己のような過言(言い過ぎて無礼にあたること)を言うやつはいない。始終が見届けない(将来どうなるか分かったものではない)」

とて脇差を抜いて、おれに切りつけたが、清という妻が謝ってくれたっけ。

 

  小吉は7歳の時、家に養子入りしましたが、勝家には許嫁の(のぶ。小吉の2歳年下)と、その祖母である婆様しかいなかったため、3人(小吉、信、婆様)は小吉の実家である男谷家に引き取られ、一緒に暮らしていました。

 小吉は姑である婆様と折り合いが悪く、原作『夢酔独言』で、婆様について「やかましい」とか、「いじめる」とか、そんなことばっかり書いています。

 

 

 

 六話「弟・鉄朔」に続きます。

 駿河台から、本所に引っ越した小吉一家。

 なぜ四話や五話で、原作にない小吉の飼い犬が登場するのか…伏線回収の時間です(要は犬が出てくるんですね)。

 お楽しみに!

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