『夢酔独言』 百九話 立て替え金が三百三十九両になりました
かつて小吉が世話をした地主一家の岡野家。新当主の孫一郎がちゃらんぽらんで、家風は乱れるばかり。
そんな岡野家に、新しい用人(庶務・会計係)の大川丈助が雇われます。岡野家の支払いの立て替えをしていた丈助ですが、1年で立て替え金が339両に。岡野家に、そんな大金が返せるわけもなく…。
岡野家が新しく雇った用人の大川丈助に、もろもろの支払いのお金を立て替え続けてもらったら、1年ほどで339両にもなってさあ大変、とういうお話です。339両は、円に換算すると約3250万円です。いくらちょっとずつでも、そんな大金を払えるのか疑問ですが…。
小吉が岡野家の騒動に関わるのは、大川丈助を雇う雇わないの時と、1年後に立て替え金の騒動が起きた時です。マンガではうっかり前者の時点で小吉が隠居していたみたいになっていますが、後者の立て替え金騒動が起きた年が、小吉が隠居した年です。
このシリーズは原作を読んでも正直分かりにくいばかりなので、かいつまんで説明すると、
大川丈助は岡野の当主・孫一郎の伯父を買収して岡野家の用人になった。いろんな支払いを丈助に立て替えてもらっていたら、1年でどえらい金額になる。いまさら大金を払えないので丈助を追い出してうやむやにしようと思ったら、立て替え金が339両になったから払ってくれと言われる。詳細の控えを二組作ったが、岡野側の控えは燃やされて丈助側に水増しがあったとしても証拠がない。岡野の関係者が次々丈助と話し合いをするがらちが明かない。小吉は義太夫節を聞きに行った。
という感じです。
『夢酔独言』では大川丈助を「丈助」と下の名前で呼んでいますが、別に親みがあるからではなく、その人物を語るうえで家柄が重要でなければ、下の名前で呼ぶようです。地主で当主の岡野孫一郎も、「孫一郎」呼びです。
小吉が義太夫を聞きに行って涙ぐんでいるのは、ちょうどその頃勝海舟が涙もろかったという逸話を仕入れたからです。勝海舟はまた、決して人前であくびをしなかったそうです。
百十話「岡野家大混雑」に続きます。岡野家の騒動クライマックスです。当主の孫一郎の困り具合も、クライマックス!