マンガ『夢酔独言』の百八~百二十二話が、ここから読めます。
小吉37歳冬の大川丈助と岡野孫一郎の騒動から、摂州へ行って御願塚村で金談をし、江戸へ帰るまでのエピソードです。
「上坂編」全体と、各話あらすじ付き。
・あらすじ
29歳の時本所・入江町に引っ越して来た小吉は、金に困っているという地主・岡野孫一郎の世話をする。道楽者の孫一郎のために自分が貧乏になってしまう小吉だが、孫一郎の臨終に、後の孫一郎(息子、当時14歳)の世話を頼まれる。
後の孫一郎もまた道楽者で、酒を覚えてから岡野家は乱れ始める。
小吉が隠居する前年、岡野家に大川丈助という用人(武家の庶務・会計係)が雇われる。小吉は岡野の親類に頼まれて大川丈助を雇わないよう孫一郎に言うが、「地面を返してくれ(=出て行け)」と言われ、ケンカ別れになった。
丈助は岡野家の支払いをたびたび立て替えていたが、1年半後、339両(約3000万円)の返金を強訴する丈助に、返金のあてがない岡野家は困り果てる。小吉は騒動を傍観していたが、島田虎之助に諭され、解決に乗り出した。〈前編〉
解決策とは、岡野家が支配している摂州の御願塚村へ行き、「地頭(岡野家)のために金を出せ」と説得すること。
10月、隠居して「夢酔(むすい)」と名を改めた小吉は、12月19日までに金を用意すると約束して、11月9日、家来を連れて上坂する。
村へ着くと、江戸で聞いた話と違って、金を出す余裕はないという。
夢酔一行に反発し、竹槍まで持ち出した村人たちの心を、徐々に掌握していく小吉。しかし12月に入っても、金は得られないまま。〈中編〉
ある晩、小吉は村人を集め宴会を催し、その最後に切腹をする。〈後編〉
●前編(百八~百十二話)
地主・岡野孫一郎のあらましから、大川丈助登場、立て替え金騒動を経て、小吉が江戸を出発するまで。
・百八話 後の孫一郎もまたふしだら
岡野家の新当主となった孫一郎だが、毎晩乱酒をして、家風は乱れるばかり。
孫一郎の叔父が大川丈助という用人を雇おうとするが、親類たちは反対する。頼まれて丈助を雇わないよう孫一郎に忠告する小吉だが、ケンカ別れになる。
・百九話 立て替え金が三百三十九両になりました
岡野家の用人になった大川丈助。支払いをたびたび立て替えていたが、その返金が一向にされないので、老中に直訴する。
・百十話 岡野家大混雑
丈助が強引に返金を訴えるため、岡野家は大混乱に陥る。
一方、小吉は知らぬ顔を決めこみ、義太夫節を聞き歩く。
・百十一話 島田虎之助、勝小吉を動かす
岡野家の大騒動に介入しない小吉を、島田虎之助が諭す。
・百十二話 左衛門太郎改め夢酔といった
丈助に返金することに意見がまとまった岡野家。その金は、どこから用立てるか。
●中編(百十三~ 百十七話)
御願塚村での、小吉と村人たちのかけひき。
・百十三話 江戸で聞いた話と大きに違うぜ
岡野家の知行地・御願塚村へ来た夢酔(=小吉)一行。ところが話を聞くと、出てくるはずの金がない。
・百十四話 夢酔一行、竹槍百姓に取り巻かれる
夢酔一行に反発する百姓たちが、竹槍を持って宿に押し寄せる。
・百十五話 町奉行はおれの相弟子
反発する村人たちに、小吉は縁もゆかりもない大坂の町奉行の威光を借りる作戦に出る。その方法とは。
・百十六話 夢酔、雨を降らせる
村の悪輩を連れて、参詣に出掛ける小吉。悪輩の人心を掌握するために、小吉は雨を降らせる。
・百十七話 支度
あと少しのところで、村から金を引き出せない小吉。最終手段に出る。
●後編
小吉の切腹劇と、その後。
・百十八話 最後の宴会
小吉は村方一同を集め、宴会を催す。そしてその最後、「自殺をして返金を諦めさせる」と宣言する。
百十九話 切腹
切腹前の小吉の口上。
・百二十話 初めからそのつもりさ
切腹劇の末、村方から金を出すという証文を手に入れた小吉。切腹劇の真相とは…。
・百二十一話 百五十両踏み倒す
丈助への返金は預かったものの、今度は孫一郎に村からの借金があるという。これを小吉は、ある方法を使って踏み倒す。
・百二十二話 髷を切って江戸へ帰る
摂州から江戸へ帰った小吉、今回の大仕事の報酬は…。
百二十三~百三十二話の「晩年編」では、小吉が江戸へ帰ってから、自伝『夢酔独言』を書くまでのエピソードです。天保の改革で罰を受けたり、大病を患いますが、『夢酔独言』に至る心境は、決して暗いものではありません。
息子・麟太郎(後の勝海舟)のエピソードが多くなってきます。
百二十三話「最後の喧嘩」はこちらから。
摂州から江戸へ帰った夢酔(=小吉)は、することもないので浅草で遊び歩き、島田虎之助の家でゴロゴロするばかり。そんな小吉に、虎之助は香取・鹿島詣でを勧める。