『夢酔独言』 百二十六話 息子の座禅、父の物欲
夢酔(=小吉)39歳、麟太郎18歳。
麟太郎が座禅を始ますが、片や小吉は、またまた散財の予感です。
前回、半年間の他行留(たぎょうどめ=外出禁止)から解放され、小吉はあちこち飛び歩きます。一方麟太郎は、家族と別居し、島田虎之助の道場へ寄宿していました。
今回は、勝小吉の自伝『夢酔独言』と勝海舟の言葉集『氷川清話』の半々でお送りします。
かの島田という先生が、剣術の奥意を極めるには、まず禅学をせよと勧めた。それで、確か十九か二十の時であった、牛島の弘福寺という寺に行って禅学を始めた。
大勢の坊主と禅堂に座禅を組んでいると、和尚が棒を持ってきて、不意に禅座している者の肩を叩く。すると片っ端から仰向けに倒れる。なに、皆が座しても、銭のことやら、旨い物のことやら、いろいろのことを考えて、心がどこかに飛んでしまっている。そこを叩かれるから、びっくりして転げるのだ。おれなんかも、初めはこのひっくり返る連中であった。
※『氷川清話』より現代仮名遣いで引用
後半の島田先生のセリフは、この勝海舟の言葉より拝借しています。
5ページ目、麟太郎の脳裏に様々な物事が浮かぶ中、なぜか世界地図がありますが、麟太郎はこの時点では地図を見ていません。話の順番入れ替えの弊害でこんなことになってますが、時空の歪みと思って気にしないでください。清書するとき直します。
一方、小吉は従弟の竹内平右衛門さんと、茶道楽に手を出します。
さっそく、大金をつぎ込む予感…。
百二十七話「夢酔、倒れる」に続きます。縄張りで幅を利かせる小吉、羽振りも良くなりますが、病魔は確実に迫っていました。