マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 百四十一話 渋田利右衛門

『夢酔独言』 百四十一話 渋田利右衛門

  

  弘化二年(西暦1845)、23歳で結婚した麟太郎は、翌年春、蘭学の師匠である永井青崖先生が住む赤坂へ引っ越します。しかし、収入のあてのない麟太郎は極貧生活を送ることに…。

 本を買う金も無い麟太郎は、本屋で立ち読みをする日々。そこへ、江戸で本を買い集めているという商人・渋田利右衛門が現れます。

 

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 ※今回からスキャナー(実家の)が新しくなったので、いくらか読みやすくなっています。やったね!

 

 

 

 今回のお話は、勝海舟の発言をまとめた『氷川清話』の内容をマンガにしたものです。年代は明記されていませんが、麟太郎が結婚し赤坂へ引っ越した弘化三年(西暦1846、麟太郎24歳)以降、長崎へ留学する安政二年(西暦1856、麟太郎34歳)以前と推測されます。

 漫画では、弘化二年(西暦1846)の出来事として描いています。

 

  『氷川清話』の該当箇所はこちら。

 

 これはおれの大切な記念物で、話せば長いが、今も言う通り、若い時代におれは非常に貧乏で、書物を買う金がなかったから、日本橋、江戸橋との間で、ちょうど今三菱の倉があるところへ、嘉七という男が小さい書物屋を開いていたので、そこへおれはたびたび行って、店先に立ちながら、並べてあるいろいろの書物を読むことにしておった。すると向うでもおれが貧乏で書物が買えないのだということを察して、いろいろ親切に言ってくれた。

 ところがその頃、北海道の商人で渋田利右衛門という男もたびたびこの店へ来るので、嘉七からおれの話を聞いて、

「それは感心なお方だ。自分も書物が大変に好きだが、ともかくも一度会ってみよう」

と言うので、ついに嘉七の店で出会った。ところが渋田と言うには、

「同じ好みの道だから、この後ご交際を願いたい、私もお屋敷へ伺いますから、あなたもなにとぞ旅宿へおいでください」

といって、無理に引っぱって行った。旅宿というのは元の永代橋辺りだったが、そこでその日はゆるり話をした。

 この男は元来箱館の商人の子で、子供の時から本が非常に好きで始終本ばかり読むので、親がひどくこれを嫌って書見は一切禁じたのを、なお隠れ隠れに読んでいたところが、ある時親から見つけられて、むごい目に叱られたうえ、懲らしめのために両手を縛って二階へ押し込められ、一日飯も食わないで居らせられた。やがて日暮れになると、親はもう懲りたであろうと思って、二階へ上がって見ると、懲りるどころか、縛られながらもその辺に落ち散ってあった草双紙を、足で開いて読んでいるので、親もとうとう我を折って、これからは家業さえ怠らねば書見は許すということになった。そこで渋田は非常に喜んで、家業の余暇にはいろいろな書物を買って読み、江戸へ出た時などにはたいそうな金をかけてたくさんの珍本や有益の機械などを求めて帰って、郷里の人に説き聞かせるのを、一番の楽しみにしているということだった。その話の中にはなかなか面白いことがあって、人物も高尚で、ちょっと見たところでは色が白くて痩せ形で、さながら婦人のようだけれど、どことなく毅然として動かないところがあって、確かに一種の人物らしかった。

※はやおきによる現代仮名遣い

 

 

 

 渋田利右衛門という人物は、何となく麟太郎より年上だけどそれほど高齢ではないと推測していましたが(「婦人のよう」に見えるという海舟の発言から)、調べてみると、1818年生まれで麟太郎より5歳年上、弘化二年(西暦1846)の時点で29歳だったようです。

 「箱館の商人」ということですが、不勉強なもので、北海道に明治時代より前に日本人が商売をしていたこと自体に驚きました。親御さんが家業としていたということは、少なくとも先代から、北海道で商売をしていたということですね。

 

 

 

 さて、以下ははやおきの言い訳解説コーナーです。

 

 永井青崖(ながいせいがい)先生のお家で麟太郎がオランダ語がについて何か会話していますが、出てくるオランダ語は、一応調べたけどテキトーです。オランダで試さないでください。恥をかきます。

 あと、麟太郎が読んでいる本の背表紙には、そのまんま「オランダ」と書いてあります。こちらは、江戸時代の瓦版か何かを実際に仕入れて、そこに書いてあったのを写しました。

 

 最後の方、麟太郎が布団に入って物思いにふけるシーンがありますが、勝海舟が「めちゃくちゃ貧乏で机に寄りかかって寝ていた」とか言ってるので、布団を没収してもよかったとも思います。

 

 この先の展開を知っているがゆえに、何となく最初から渋田さんをいい人っぽく描いてしまいましたが、「麟太郎が読む本を買い占めちゃう敵役の商人」という登場の仕方でも、よかったかもしれません。

 

 

 

  ところで、この漫画では、主人公・勝小吉のモノローグは四角い枠で語られていますが、麟太郎のモノローグは、右上に穴が開いたモノローグになっています。

 で、百四十一話の一コマ目に映ってるメモ帳が、その枠というわけなんです。

 以上、伏線の回収でした。

 

 

 

 百四十二話「金と蘭書」に続きます。

 ボロボロ屋敷へ渋田さんを招いてしまった麟太郎、お昼時になるが、ランチはどうする!?(中略)収入源が見つかりそう!

 お楽しみに!

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