和柄コレクション 菊の和柄
菊は中国原産の花で、平安時代頃、薬用・観賞用として日本に伝来しました。
菊のモチーフとして最も有名なのは、天室の家紋でしょう。これは、鎌倉時代、後鳥羽上皇がその形を気に入って決めたもので、こんにちまで受け継がれています(菊花紋といい、花びらは前に16枚、後ろに16枚の系32枚です)。
園芸用として庶民の間に広まったのは江戸時代。たくさんの品種と、それにちなんだ模様が生まれました。
菊の模様の意味は、中国で不老不死の薬とされていたこともあり、「長寿」「無病息災」「邪気を払う」などです。
9月9日は五節句のひとつ「重陽」で(「陽」の数=奇数=九が重なるので「重陽」)、大きな陽の数「九」が重なる不吉な日に邪気を払うため、不老長寿の効能があるとされた菊を飾り、愛でました。
また、斧、琴、菊は「よきこときく」といい、おめでたい組み合わせです。
・型染木綿、菊に唐草
オーソドックスな菊の模様ですが、斑点入りの唐草が、歯車とか自転車チェーンに見えてクール。…誰がそんな見方をしろと言ったんだ。
・木綿和更紗、菊に唐草
これも古典的で基本的な模様ですが、色んなパターンの菊が鑑賞できます。
バックに影絵の唐草と菊を配置することで、奥行きが出て尚良し。
・型染木綿、菊に錨(いかり)
菊と、和風な錨の組み合わせ。
珍しい組み合わせです。私は、生物とメカの組み合わせが大好きです(※錨はメカではない)。
そして、菊と錨の大きさ比も現実離れしています。
・鳴海紺型、扇面に菊と藤
絞り染めを型染で表す、鳴海紺型の古布木綿です。扇面が、絞り染め風になっています。
藤は春、菊は秋の花だから、一年を通して使える模様となっています。
・型染木綿、菊に流水
シンプルで爽やかな模様。
菊は秋の花ですが、流水との組み合わせは定番です。
・型染木綿、菊に蝶
藍染めなのに、豪華絢爛に見える型染木綿。
白抜きで細かく描かれているのは、忍(しのぶ)と萩(はぎ)。夏から秋にかけての植物です。
・木綿和更紗、菊に松皮菱と蝶
ごく薄い木綿です。
古典的で素朴な技法で、染められた和更紗です。
・型紙摺印判、菊小紋
江戸時代中期の、型紙摺印判の変形皿です。
2パターンあります。ベースの小紋はまったく同じものを流用したわけではなく、別に再構成したもののようです…が、よく見ると、中央やや向かって左寄りに、ひとつだけ花びらの少ない菊があるのは共通です。
2枚目は、消しゴムはんこによる再現。花びらの少ない菊もあるよ!
・型紙摺印判、菊に流水
江戸時代中期の、型紙摺印判の長皿です。
型紙摺印判は、器に型紙を置き、上から染料で絵付けする技法です。型紙部分が白く残り、隙間から定着した染料が模様になります。
型紙がバラバラにならないよう、すべてがつながったデザインでなくてはいけません。模様のところどころに関係ない線があるのは、型紙の補強のためです。それも含めて、型紙摺印判の美しさです。
・型紙摺印判、菊に流水2
江戸時代中期の、型紙摺印判の変形長皿です。
型紙摺印判特有の、余白部分がすべてつながっていなければならないという制約を、隙間に水玉を配置することによって、デザインに昇華しています。
ポコポコした水玉がかわいい。
・型紙摺印判、蔓菊
江戸時代中期の、型紙摺印判の変形長皿です。
こちらは、型紙の隙間部分が少ないパターン。
余白の美。
・消しゴムはんこ、光琳菊
尾形光琳風の、単純化された模様を、「光琳模様(こうりんもよう)」といいます。
・消しゴムはんこ、陰光琳菊
浮世絵からの再現です。
葉を黒く描いた模様はたまに見ますが、花を黒くしているのは珍しい。
・消しゴムはんこ、菊と鋏(はさみ)
黄色い菊に、グレーの鋏がアクセント。
植物にメカの組み合わせ好きが表れています(※鋏はメカではない)。
・消しゴムはんこ、友禅菊
江戸時代の友禅から再現した模様です。
実物はもっとずっと素敵なんですが、はやおきが財政難の時に、よそへ売られてしまいました…今はどこかで可愛がられてると思います。
絞りで表現された花(茶色)が混じっているのがアクセント。
・消しゴムはんこ、菊蝶
浮世絵からの再現です。
灰色ベースに、紫で花、白で葉の蝶を表現しています。
現在には無い、とても江戸っぽい趣味趣向で、大好きな模様です。
・消しゴムはんこ、陰菊に枝立涌
大正ロマンの香りがしますが、江戸時代の浮世絵からの再現です。
黒で菊を表し、枝で立涌(たてわく、蜃気楼を表す和柄)を構成しています。花芯は水色で、爽やかで涼しげな和柄です。
・消しゴムはんこ、乱菊
浮世絵からの再現。
乱れたように咲く菊の模様を、乱菊(らんぎく)といいます。
・消しゴムはんこ、更紗雛菊
自然ではない、図案化された模様の頭に、「更紗」と付ける場合があります。
ちょっと西洋風な和柄です。
・消しゴムはんこ、こんにゃく印判の菊
もともと、こんにゃく印判を再現したくて始めた消しゴムはんこ。
こんにゃく印判とは、型紙摺印判と同じく、江戸時代中期の古伊万里にのみ使われた技法です。
型紙摺印判が型紙の隙間から染料で絵付けするのに対し、こんにゃく印判は、柔らかい素材(詳細は不明、牛革説あり)に染料を付けて、スタンプのように絵付けする技法です。
こんにゃく印判の猪口は、むちゃくちゃ高価なんです。一連のこんにゃく印判、実物だと計50万円以上はします。oh…。
こんにゃく印判の魅力は、「和風」に納まらない洗練されたシンプルなデザイン。すべて菊ですが、それぞれ違ったデフォルメがされています。