マンガで読める『夢酔独言』

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勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『夢酔独言』 百二十一話 百五十両を踏み倒す

『夢酔独言』 百二十一話 百五十両を踏み倒す

 

 切腹芝居で村方を脅し、江戸の地主・岡野孫一郎のために550両出させることに成功した夢酔(=小吉)。

 ところが、孫一郎には他に150両の借金があり、それを返してほしいと、証文まで見せられます。サブタイトル通り踏み倒すため、夢酔が選んだ手段とは…!?

 

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 村方から550両受け取った小吉。江戸で大川丈助へ返す金は339両ですが、江戸⇔大阪の旅費や、大川丈助への手当供の者×4人分の給料滞在中の雑費町奉行の贈り物の自作自演切腹芝居のための衣装、小道具代その他が、残り211両に含まれるようです。

 『夢酔独言』レートだと、1両=96000円で、

 

 550両(5280万円)-339両(3254万円)=211両(2026万円)

 

となります。

 ちなみに村側の小吉への接待費ですが、「五人で十匁」という記述があります。小吉一行がおおよそ一ヶ月滞在したとして、10匁は六分の一両なので×30日=50両かかったことになります。

 その上暮のまかない(村の地頭・岡野孫一郎の生活費援助)が330両

 村の出費は550両+50両+330両=930両(8928万円)にもなります。

 900両といえば、小吉の昔の地主さんの傾きかけた家が立ち直るほどの金額で、また、小吉の友達が博奕で一晩で儲けた額と同じぐらいです。

 

 「減額してほしい」との村方の訴えを却下する小吉。容赦ありません。

 かわりに、同行していた猪山勇八郎さんの身柄を引き渡すことを約束しますが、裏がありそうです。

 

 小吉は村の処分を決めますが、内訳は以下の通り。

 

 ・小吉一行に敵対した者を水呑み百姓(田畑を所有しない小作または日雇いの農民)の身分に落とす

 ・昔から住んでいる古百姓へ役儀(つとめ)を言いつける=庄屋、組頭、百姓代などに格上げする

 ・出資者に名字を与える

 ・村の代官に屋敷と、年に米9斗(2,25俵)収穫が見込まれる荒地を与える

 ・今回の一件に貢献した者それぞれに羽織、裃(かみしも)を与える

 

 これを小吉は、四ツ時(午前10時)に550両を受け取ってから、夕方(ちなみに年末なのでせいぜい17時)までにすべて決定しています。めちゃくちゃスピーディーです。

 

 そして夜にみんなでおしゃべりしていると、村方の二人から訴えが。

 

 その晩、皆々打ち解けて話していると、村方の宇市、源左衛門というのが願書を出してきた。見ると、岡野孫一郎が村から借りた百五十両を、この暮返すと記した証文だ。

期限を延ばすよう言って聞かせろ」とおれが代官に言って、代官から二人へ申し渡した。

 二人があれこれと言うから、おれが矢面に立った。

書付けを見せろ

と、二人から書付けを取り上げた。そして燭台の火へかざし、よく見るふりをして焼いてしまった。

 二人が顔色を変えてぐずぐず言うから、

おれがしたことにかれこれ言うのはどういう心得だ。其の方両人は別してこれまでおれに刃向かったのを、格別の勘弁をしておくのに不届きのやつだ

と脅かしてやったら大きに怖がった。そこで

この証文は夢酔がもらいおく

と言って立って座敷に入ったら、二人は「恐れ入りました」と、早々に帰っていった。

 こうして、百五十両は一言にて踏んでしまった。

 何でも人は勢いが肝心だと思った。

※原作よりはやおき訳で引用 。赤字が小吉のセリフ。

 

 証文をよく見るふりをして燃やす、というのもたいがいですが、「人は何でも勢いが肝心」は、小吉のダメ人間豪快ぶりが際立つ見解です。最後の一文は、原作だと「なんでも人はいきおひがかんじんだとおもつた」となっています。

 

 

 

・おまけ

 

 一連の岡野孫一郎の騒動ですが、このような資料があります。

 二行目に勝麟太郎、三行目の頭に「夢酔」、最後から二行目に「岡野孫一郎」の名前が読み取れます。

 

※『勝小吉と勝海舟 「父子鷹」の明治維新』より
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 百二十二話「髷を切って江戸へ帰る」に続きます。 京都へ行く小吉一行。村に引き渡すと約束した猪山勇八郎の運命やいかに。

 

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