マンガで読める『夢酔独言』

マンガで読める『夢酔独言』

勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

古典初心者でも読める『夢酔独言』入門

古典初心者でも読める『夢酔独言』入門

 

 『夢酔独言』とは・・・勝海舟の父親、勝小吉が、「男たるもの決しておれの真似をしないがいい」と書き遺した自伝。不良ふしだらに過ごした半生を反省すると見せかけて、大半のエピソードがいつの間にか悪行自慢にすり替わっている。読み書きの基礎がないため口語体で書かれており、そのお陰で現代語訳なしでもそこそこ読めるという、日本文学史のカモノハシ的存在。

 このブログでマンガが読めます。

 

 さて、そんな『夢酔独言』ですが、いくら現代語訳なしで読めるといっても、やはり江戸時代の人が書いた文章ですから、馴染みのない言い回し、用語がままあります。

 この記事では、『夢酔独言』原作を楽しく読んでもらうための、また、マンガ版でよくわからない用語の解説ページといたします。

 

 

 

 

 

 

一、原作を楽しく読むために

 

 

・序文はとばしましょう

 

 初心者がまずつまづくのが、前置きの序文です。私も最初読んだ時は「おいおい、これずっと読ませる気かよ?」と思いました。文章を書き始める時は、小吉といえど肩ひじが張ってしまうもの。サクッととばして、「出生」から読み始めましょう。「おれほどの馬鹿な者は世の中にもあんまり有るまいとおもふ。」からが本番です。大丈夫、全部読み終わるころには、序文も面白く読めるようになっています。

 

・気になる総ページ数

 

 『夢酔独言』原作を読みたいけど、あんまり長いのはちょっと…。という方。

 『夢酔独言』は文庫本で130ページ程度です。少年ジャンプの単行本のページ数以下、夏目漱石の『坊っちゃん』の約7割です。

 

・実際の文面

 

 いくら原文ママで読めると言っても、やっぱり実際読んでみないと感じは掴めません。「出生」のくだりのひとしきりを引用します。

 

  おれほどの馬鹿な者は世の中にもあんまり有るまいとおもふ。ゆえに孫やひこのために、はなしてきかせるが、能々不法もの、馬鹿者のいましめにするがいいぜ。おれは妾の子で、はゝおやがおやぢの気にちがつて、おふくろの内で生れた。夫(それ)を本とふのおふくろが引とつて、うばでそだてゝくれたが、がきのじぶんよりわるさ斗り(ばかり)して、おふくろもこまつたといふことだ、と。夫(それ)におやぢが日勤の勤め故に、内にはいなゐから、毎日々々まがまゝばかりいふて、強情故みんながもてあつかつた、と用人の利平次と云(いう)ぢゝいがはなした。

 

 本編は、ずっとこんなノリです。

 

現代社会に疲れたときに読む(とくに夏がおすすめ)

 

 原作者兼主人公の小吉は、生涯無職の不良旗本。7歳の時に勝家に養子に入りますが、お姑さんとうまくいかず、14歳で単身家出。道中盗人に身ぐるみはがされ無一文になり、物乞いをして旅を続けます。帰宅後も、就活がうまくいかず喧嘩ばかりし、再び家出。連れ戻されて檻に入れられ…。

 終始こんなことばかりしている小吉ですが、持ち前の図太さと悪知恵で、目の前の困難を乗り切っていきます。一生無職のままで。

 そんな小吉の姿を追っていくと、「何にもなくても生きて行けるじゃん!」という不思議なすがすがしさをかんじられます。

 「無職でアホな小吉に比べれば自分はまだマシ」という楽しみ方も、不本意ですがアリです。

 ちなみになぜ夏がおすすめかというと、私が夏に読んだから。あと、寒いと、小吉の困窮具合に笑えなくなります。

 

・これをおさえておけばだいたい読める!「夫」と「が」と「尤も」と「斗り」

 

 『夢酔独言』を読むにあたって困惑する単語四天王が、「夫」と「が」、「尤も」、「斗り」です。

 

・夫・・・「それ」と読みます。正直2ページぐらい読んだら察しがつくけど、転ばぬ先の杖。

 

・「が」・・・「○○の」を表すのに、結構な割合で「が」が使われます。「おれが○○」など。意味が分からないときは、「の」を疑いましょう。

 

・「尤も」・・・「もっとも」と読みます。なるほどそのとおり、という意味です。

 

・「斗り」・・・「○○ぐらい」、「○○だけ」という意味。

 

※おまけ(小吉語)

・不残・・・「のこらず」

・六ヶ敷・・・「むつかしく」

 

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・マンガを読む

 

 「古典は読まねえ!」と心に決めている方、このブログでマンガ版を読みましょう。

 一話目はこちら。

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

 

 

二、用語

 

 

●武士用語(※あくまで『夢酔独言』をスムーズに読むための解説なので、ざっくりです)

 

 

・小普請組(こぶしんぐみ)

非役、つまり勤めがない旗本、御家人がとりあえず入れられる組。小吉が所属。

 

・旗本、御家人(はたもと、ごけにん)

ともに知行高1万石以下で、直参(じきさん=将軍直属の家臣)。お目見え以上が旗本で、以下が御家人。小吉が生まれた男谷家、養家の勝家ともに旗本。

 

 

・頭(かしら)、支配

「頭」といえばこの小普請組頭を指します。とりあえず上司。

 

・高(たか)

知行高。収入。石(こく)とか俵(ひょう)とか。

 

・〇俵〇人扶持

給料の内訳。俵は現金支給で一年分、扶持は人数分の米の収入で、毎月。〇人の数だけ、養わなければいけない。

 

 

・用人(ようにん)

 

大名、旗本の家で、庶務・会計などにあたった人。

男谷家の利平次、大川丈助など。

 

・武士の名称

大名、旗本、御家人、侍、中間、小物、用人、与力、みんな武士です。小吉は旗本。

 

・知行所、支配地

武士が幕府から与えられ、支配、管理する土地。年貢を徴収したり、困ったらお金も用立ててもらいます。支配している武士を地頭、殿様と呼んでいます。

 

・蔵宿(くらやど=浅草の札差)

旗本、御家人の代理として、蔵米の受け取りや売りさばきの事務をし、その手数料を取る業者。また、その蔵米を担保にして金を貸した。小吉は蔵宿にたびたび借金をしています。

 

 

 

●その他、文化、風俗系

 

 

・株

その身分の価値を、売り買いできるもの。武士の身分や、湯屋を営業する権利など。

 

・講(こう)

目的を同じとする人の集まり。サークル。宗教関係が多い。お金を出し合って寄進したり、イベントを開催したり。

 

・無尽(むじん)

一定の人数が集まり、出資して、くじあるいは指定した一人に合計金額を融資すること。融資を受けるのは順番制。

 

 

 

●お金

 

 

・文(もん)・・・朱の240分の1。

         マンガ『夢酔独言』では、4文を100円と設定しています。

 

・朱(しゅ)・・・分の4分の1、240文。

         1朱=6000円

 

・分(ぶ)・・・1両の4分の1。4朱。

        1分=24000円

 

・両(りょう)・・・4分=1両=96000円

 

※これはたびたび計算しているんですが、何分苦手分野なため、他の記事で計算が合っているか怪しいです。この記事での計算を基準とします。

 

 

三、理想の『夢酔独言』

 

・基本原文のままで…

・現代仮名遣いにしてくれてる 

 例:「いふ」→「いう」、「やうやう」→「ようよう」

・送り仮名を補ってくれてる

 例:「付て」→「付けて」など。間違いではないけれど読みにくい

・めちゃめちゃふりがなふってくれてる。中学一年生でも読めるくらい

・セリフのところは改行

・ページの上下でそのつど解説してくれる

・5~20ページごとに、分かりやすい絵入りのコラムがついている

 

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 ひとまずここまでとしますが、他に解説した方が良い単語などあれば、今後加筆していきます。

 お付き合いありがとうございました。