『夢酔独言』 五十三話 おれの子だよ
二度目も家出から、江戸に帰った21歳の小吉。妻が妊娠してました&檻に入ることになりました。
…内へ帰つたら、座敷へ三畳のおりを拵て(こしらえて)置て、おれをぶちこんだ。
それから色々工夫をして一月もたゝぬうちおりの柱を二本ぬけるよふにしておゐたが、能々(よくよく)考へた所が、みんなおれがわりいから起きたことだ、と気がつゐたから、おりの中で手習を始めた。
夫(それ)からいろゝゝ軍書の本も毎日見た。友立(ともだち)が尋てくるから、おりのそばへ呼で、世間の事を聞てたのしんでいたが、廿一の秋から廿四の冬迄、お理(檻)の中へはゐていたが、くるしかつた。
原作該当箇所は以上です。一話目で、小吉が檻に入っている場面はここにつながります。
妻が身ごもっていることが発覚して小吉を迎えに行ったものの、野放しにしたら危ないので檻に入れた、というのが推測です。息子が生まれるのが1月の末で、小吉が帰ったのが7月だとすると、息子が生まれる5ヶ月半ぐらい前のことになります。
さっそく檻の柱を抜けるようにしておくところが、小吉らしいところ。
原作にある通り、小吉は24歳の冬まで、この檻に入っていました。後のくだりによると、檻の中で息子が3歳になることは把握していたようでが、小吉は息子が生まれてから3歳になるまで、会ったことも、ましてや教育なんか、全然していなかったのでした。
五十四話に続きます。いよいよ、息子が登場…かもしれない。