『夢酔独言』 七十八話 四文の銭も無い
ここまでのおさらい:本所割下水(わりげすい)の地主さんともめて、入江町に引っ越して来た小吉でしたが…。
引っ越して早々、地主さんの借金について相談を持ちかけられた小吉。商売(刀剣道具の売買)道具を質屋に入れてまでお金を用意しますが、工面してあげた金は返ってこず、勝手に転売したため道具屋からは信用を失います。
そんなある夜、小吉の元を、ある人物が訪ねます…。
小吉は自分も貧乏で困っているのに、地主さんのお金を工面してあげます。それもこれも、とある老人に「怨(うらみ)を恩で返して見ろ」と言われ、それから「人の出来ぬ六ヶ敷(むつかし)ひ相談事、かけ合、其外何事にかぎらず、手前の事のよふに思つて」やることを実践しているからです。小吉にしては感心な心掛けですね。
その時のエピソードはこちら。
ちなみに四文はマンガ『夢酔独言』レートで100円です。一両が何文かというのを気が向いて計算した記事があったんですが、どの記事だったか失念してしまいました。一両だいたい10万円くらいです。小吉は17歳の時、200両盗んで吉原で使っちゃいましたが、今は昔。
地主の当主が道楽者で、或とき揚代が十七両たまつて、吉原の茶屋が願うといゝおつてこまつたが、不断だから誰も世話をしない故、おれに頼んだ。おれは昨今のことだから、しらず、金を工面して済してやつたが、(中略)夫(それ)から万事金のゆふづうがわるくなつてこまつた。夫(それ)につき合がはるから、大迷惑をした。
そしてある夜中、小吉の元に謎の女性が。
七十九話「隠居のふしだら」に続きます。