『夢酔独言』 二十八話 祭りは喧嘩をしに行くところ
小吉には、近所に新太郎と忠次郎という、同年代の親戚がいました。ある時、小吉と兄弟は、用人の源兵衛を伴って八幡のお祭りへ、ケンカをしに出掛けます。
初めは数人にケンカを売ったつもりが、大人数が凶器(長鉤)を持って加勢に現れ、小吉たちは刀を抜いて応戦します。
※みんなの刀の持ち方が変とかは、その通りなので気にしないでください。見栄え重視で描きました。
小吉はお父さんがおじいちゃんなので、甥っ子達との方が、年齢が近いようです。この新太郎・忠次郎兄弟は親しい友達という感じで、これからたびたび登場します。
従弟の家の源兵衛や男谷家の利平爺のように、旗本の家には「用人(ようにん)」という人がいました。現代風に例えると、住み込みの事務員さんです。『夢酔独言』では、たびたびエピソードの主要人物として、用人が登場します。
「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉のとおり、江戸時代には喧嘩が流行していました。太平の世が長らく続き、持て余した暴力性を発散するための、一種スポーツ感覚だったようです。
素手かと思いきや、武士は刀で、人足は鳶口で戦います。
死人出そう。
…八幡へはゐると、向うふよりきいたふうのやつが二、三人で鼻歌をうたつて来る故、一ばんに忠次郎がそゐつへ唾を顔へしかけつたが、其野郎が腹を立て、下駄でぶつてかゝりおつた。そふするとおれがにぎりこぶしで横つらをなぐつてやると、跡のやつらが総がかりでぶつてかゝりおるから、…
みんな、ガラ悪すぎです。
二十九話に続きます。