『夢酔独言』 三十話 喧嘩の稽古
前回、親戚の兄弟・新太郎と忠次郎と一緒にお祭りへケンカをしに行った小吉ですが、大勢を相手にすることになり、散々な目に遭いました。そこで小吉は兄弟の家の用人・源兵衛を師匠に、ケンカの稽古を始めます。
だんだんケンカも上手になってきた(本人談)小吉。
ところがその年の末、ケンカで忠次郎が肩を切られて…。
小吉が食事中、妻の信を殴って笑うくだりは創作です。さすがにそこまでイカレていません。喧嘩への入れこみようと、生き方の激しさを表したくて入れました。あと、喧嘩が上手になるきっかけのくだりを入れたかったので。ただし、信を毎日殴っていたのは本当だったようです(本人談)。
個人的には、従弟(兄弟の父親)にケンカのことがバレるくだりが、生活感があって好きです。
其晩はしらずに寝たが、翌朝女がき物をこたつへかけるとて見付て、忠次の親父へそふいつたゆへ、…
家の女中さんが、忠次郎の着物を温めるためコタツにかけようとしたら、着物が切れているのが見つかって、ケンカがバレた、ということらしいです。小吉が把握しているということは、忠次郎か新太郎が、お説教の前後に小吉にいきさつを話したんでしょう。そういうことを想像すると、ほほえましいです。
三十一話へ続きます。