マンガで読める『夢酔独言』

マンガで読める『夢酔独言』

勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』がマンガで読めるブログです。

『小吉の女房2』 第四回「麟太郎、ナポレオンと出会う」感想&『夢酔独言』的解説

 土曜時代ドラマ『小吉の女房二2』の地上波放送が始まったので、BS放送当時に描いた感想&『夢酔独言』的解説記事を公開し直します。内容はBS放送時のものです。ネタバレがおおいにあるので、ドラマを観た後で読んでくださいね。 第四回「麟太郎、ナポレオンと出会う」は、1月29日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!

 

 

 

 勝海舟の父・小吉の妻のお信が主人公のドラマ『小吉の女房2』

 この記事では、ドラマの微々たる感想と、勝小吉自伝『夢酔独言』目線で、ドラマの解説をいたします。

 ネタバレあり。

なお、いつもBSが映るはやおきの実家で観ているのですが、今回に限って母親が食器洗いの真っ最中で、前半のセリフを聞き逃したりしていますがご容赦ください。

 

 

 

 

 

 

・第四回「麟太郎、ナポレオンと出会う」あらすじ

 

世は天保の改革、庶民に奢侈を禁じる厳しすぎる政治に江戸の街は疲弊し、お信(沢口靖子)の周りにも被害をもらたしていた。成長した麟太郎(稲葉友)は芸者のお民(大西礼芳)や火消しの頭・新門辰五郎市川右團次)と知り合い見聞を広め、改革を憂いていた。麟太郎は小吉(古田新太)の友人・都甲斧太郎(風間杜夫)という風変わりな蘭学者に弟子入り、庶民から出世したナポレオンの存在を知るなど、蘭学に傾倒していく。

※NHKホームページより引用

 

 

 

・感想

・麟太郎がおっきくなってる

 

・なつかしの「石原おこし」登場

 

・お信がいつになくしんみり

  

 

 

・『夢酔独言』的解説

 

 ※いよいよ今回から、勝小吉著『夢酔独言』に登場する内容がなくなってきましたが、 幸いマンガ『夢酔独言』に、麟太郎(勝海舟)絡みで該当する箇所がいくつかあるので、そっち方面で解説いたします。なお、出典は主に、勝海舟の発言をまとめた『氷川清話』です。

 

  天保十三年(西暦1842)三月お信沢口靖子さん)39歳、小吉古田新太さん)41歳、麟太郎稲葉友さん)20歳、お順稲垣来泉さん)7歳です。

今回から、麟太郎が急にでっかくなっています。

  冒頭は、いつものお信の「家内円満、無病息災」のセリフと、小吉と麟太郎のラジオ体操&放屁で始まります。

 前回までは、本所入江町に住んでいた小吉一家ですが、今回から、虎の門での生活となります。家は麟太郎と同役(小普請組)の保科さんという人の家なのですが、この家について、後に勝海舟(麟太郎)は、

 

 その同役の家というのは、たった二間だったが、その狭いところで同居したこともあったよ。

 ※『氷川清話』よりはやおきによる現代仮名遣いで引用

 

 と語っています。

 

 世は天保の改革で、庶民に贅沢禁止が強いられていました。豆腐のサイズも決められていたとか…。

 

 麟太郎は剣術の稽古に出掛け、小吉はいつの間にか外出。残されたお信は、「御休処」との文字を看板(ミニサイズ)をしたためます。実際の信も、書をたしなんでいました。

 お信は看板を、溜池にあるお徳さんという人の茶屋に届けます。このお徳さん、以前は髪結いをしていたそうですが、女の髪結いはご法度となったため、休業中とのことでした。

 

 一方浅草新堀島田虎之助さんの道場では、麟太郎が、剣術の稽古に励みます。

 麟太郎の剣術の流派は直心影流(じきしんかげりゅう)で、これは父親の小吉や、従兄の男谷精一郎さんと同じです。島田虎之助さんは男谷道場に弟子入りし、免許皆伝となって、道場を構えたのでした。  

 稽古後恒例の、時勢についての会話をする麟太郎と島田さん。「天保の改革は愚策」と世相を斬る麟太郎ですが、 今の自分にはどうすることもできないと、もどかしさをにじませます。 

 そんな麟太郎に、「今は人間の土台をつくる時(by島田さん)」「腹をつくれ(by小吉)」とフワッとした助言を言する大人たちですが…。

 小吉の「腹をつくれ」発言については、似たような内容が、『氷川清話』にあります。

    漫画ではここ。

f:id:hayaoki6:20210423220648j:image

 

 さて、溜池から家へ帰るお信ですが、後から誰かがついてきます。「ついてくる」とデカめのひとり言を言うお信…振り返ると、怪しい男が…と思ったら、都甲斧太郎(つこうおのたろう・風間杜夫さん)という、小吉の知り合いでした。

 お信を見て、「この毛並み…そして瞳…名馬じゃ」と、何故か馬に例えます(伏線)。

 

 

 

  一方麟太郎は稽古を終えて帰宅途中、こちらはあからさまにガラの悪い男達が、娘二人に絡んでいるところに出くわします。何でも、男にぶつかった娘Aに難癖をつけていたところ、娘B(文吉という深川芸者)が割って入ったとのこと。一触即発…というところへ、「を組」の半纏を着た新門辰五郎市川右團次さん)現れ、ガラの悪い男達は退散していきます。

 この新門辰五郎さん、おそらく最終回あたりでまた登場する伏線のために出てきたと思われます。

 娘Aはいつの間にかいなくなり、芸者の文吉にお礼を言われる麟太郎。「あっ、あっ…うん…」と挙動不審ぎみに答える麟太郎、何かの伏線ですね。

 

 

 

  麟太郎が帰宅すると、勝家に都甲斧太郎先生が。人をやたらと馬に例える都甲先生でしたが、どうやら元は公方様の馬医だったようです。

 「あの有名な都甲斧太郎先生…!」と、ひとしきり都甲先生について語る麟太郎。

 このくだりは、『氷川清話』に収録されています。

 

 ことに馬の腹中に石の出来る病がある。これはいかにしても従来の療治にては癒えざるものとしてあった。しかるに都甲先生の見たる書物にその病には亜剌比亜護謨(アラビアゴム)を薄く溶解して、これを馬に服用させれば治癒するということが書いてあった。

 

 都甲先生の馬の治療法を、なぜ他の医者はやらないのかという麟太郎の問いに、都甲先生は「うちへおいで」と答えます。

 「本を読むよりケンカの方が面白い」などど言う小吉は置いておいて、麟太郎は麻布狸穴の都甲先生宅を訪ねます。

 この麻布狸穴は、麟太郎の従兄の男谷精一郎さんが、道場を開いた場所でもあります。

 

 

 

 都甲先生宅で、お手製ビールをご馳走になる麟太郎

 都甲先生宅には、洋書がたくさん置いてあります。当然、麟太郎には読めません。

 「洋書は知識の宝庫だ。しかし幕府はこれを閉め出そうとしている。このままではこの国は食いつぶされるか、内乱になる」と語る都甲先生。

 

 常に先生が私に向かって、今日のごとき制度にては所詮この国を維持することあたわずして、ついには外国に降服せざるべからざるの悲境におちいるであろう、しかるにもし強いて今日の制度を維持せんとする時は早晩内乱をかもして、一時は凄憺たる有り様になるに違いない、故に今日ねあたり誠心誠意に西洋の事情を攻究するはもっとも必要のことであるが、うらむらくはこれを攻究する人に乏しいと言って、平生嘆息しておられた。

 

  「しかし無役の私では…」と弱気な麟太郎に、都甲先生はナポレオンの伝記を手渡し、「ナポレオンも元は一人の兵士だったが、王になった」と励まします。

  そして麟太郎は都甲先生に弟子入り志願し、蘭語オランダ語)の読み方を教えてもらうことになったのでした。 

 

 

 

  都甲斧太郎先生の話はこちら↓

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

  帰宅後、蘭語辞書で勉強する麟太郎。その姿に、お信は一抹の不安を覚えるのでした…。

 

 

  それから、巾着切りの銀次がなつかし(シーズン1に登場した)の「石原おこし」を持って来たり、それをお信お徳さんへの手土産に流用したうえ「こんなものしかなくて…」呼ばわりしますがそれは置いといて、お徳さんの身に衝撃の展開が。

 お信はすっかりしょげてしまいます。

 そんなお信に、麟太郎は「VRIJHEID(フレイへイド)=融通無碍・自由」を説きます。そして「世の中をもっと住みよいところにしたい」と語ります。

 

  最後に、平河天神にて、麟太郎の学問成就を祈願する二人。

「西洋のことを日本の神様には祈願できない」と言う麟太郎に、「天神様が西洋の神様に取り次いでくれますよ」とお信。何てかましスケールがでかいんだ!

 

 今回は、お信がしんみりしてしまった回でしたが、また今後の麟太郎の活躍で(小吉にはあんまり期待できない)、ホンワカさを取り戻してほしいものです。

 

 

 

 今回、お話に登場する地名を手元の江戸時代の地図で探しましたら、どうやら近所にかたまっていました。

 左から、都甲斧太郎宅がある麻布狸穴、勝家が押し込められた虎の門、お徳さんの茶屋があった溜池、お信と麟太郎がお参りした平河天神です。

f:id:hayaoki6:20210430212939j:image

 

 

 

 ドラマでは新門辰五郎さんや都甲斧太郎先生は小吉の知り合いということになっていますが、その記録は、はやおきが知る限りはありません。しかし、お二人の年代からしても、成立しうる話です。

 ちなみに麟太郎と出会った時(嘉永元年説が有力)、都甲先生は66歳だったそうです。 

 

 

  

 第五回「お信、娘義太夫になる」は、4月30日(金) 20:00~、BSプレミアムにて放送です!

あらすじはこちら↓

www.nhk.jp

 

 

 

  …いよいよ解説することがなくなってきそうだぞ…。

 お楽しみに!

 

 

 

 NHK総合にて、再放送が始まりました。

 第五回「お信、娘義太夫になる」は、2月26日土曜日18:05~放送です!

※今回はブログ更新をすっかり忘れていたのですでに放送されてしまいましたが、次回からは早めに何とかしますm(_ _)m

 

 

 

和柄コレクション 宝尽くし 種類と見分け方

 「宝尽くし(たからづくし)」とは、宝物など、めでたいモチーフを集めた和柄です。

 この記事では、宝尽くしの定番のモチーフサンプルをいっぱい紹介します。どこかで宝尽くしを見かけたときに、何のモチーフか判断できる助けになれば幸いです。

 

 

 

    こちらの小紋に描かれている宝物をメインに紹介します。


f:id:hayaoki6:20220120212305j:image

f:id:hayaoki6:20220120212302j:image

①隠れ笠(かくれがさ)、②隠れ蓑(かくれみの)、③巻物(まきもの)、④七宝(しっぽう)、⑤宝珠(ほうじゅ)、⑥丁子(ちょうじ)、⑦分銅(ふんどう)、⑧小槌(こづち)です。

 

 

 

 

 

 

①隠れ蓑(かくれがさ)

 災いから身を隠す、頭にかぶる笠です。

 てっぺんが突き出た市女笠タイプの方が本式で、三角のすげ笠タイプに省略したものもあります。

  UFОみたいに笠の下に〇が付いてたりしますが、くるくる巻いた掛け紐です。


f:id:hayaoki6:20220123175622j:image

f:id:hayaoki6:20220123175627j:image

f:id:hayaoki6:20220123175625j:image

f:id:hayaoki6:20220123175619j:image

 

 

 

②隠れ蓑(かくれみの)

 隠れ笠と同じく、身を隠す蓑です。

 掛け紐部分がデフォルメされており、触覚のようにくるりとカールしています。

 他の宝物を蓑の中に抱き込んで、宝尽くしのメインになっている場合もあります。

 鳳凰の翼や尾羽、足がついているものも。


f:id:hayaoki6:20220123175742j:image

f:id:hayaoki6:20220123175757j:image

f:id:hayaoki6:20220123175748j:image

f:id:hayaoki6:20220123175755j:image

f:id:hayaoki6:20220123175745j:image

f:id:hayaoki6:20220123175752j:image

f:id:hayaoki6:20220123175833j:image

 

 

 

③巻物(まきもの)

 お経などが書かれた巻き物。

 十字に交差させて、※のように〇を配置したものを、特に筒守り(つつまもり)といい、巻物を入れる容器を指すようですが、ここではまとめて巻物とします。


f:id:hayaoki6:20220123180432j:image

f:id:hayaoki6:20220123180438j:image

f:id:hayaoki6:20220123180441j:image

f:id:hayaoki6:20220123180434j:image

f:id:hayaoki6:20220123180531j:image

f:id:hayaoki6:20220123180534j:image

f:id:hayaoki6:20220123180528j:image



 

 

④七宝(しっぽう)

 円を互い違いに交差させた模様です。宝尽くしでは単体でもちいられる場合もありますが、和柄としては、地模様として使われます。

 四隅に〇が付いているタイプや、中心に花菱が入っているタイプもあります。


f:id:hayaoki6:20220123180722j:image

f:id:hayaoki6:20220123180724j:image

f:id:hayaoki6:20220123180727j:image

f:id:hayaoki6:20220123180730j:image

f:id:hayaoki6:20220123180733j:image

f:id:hayaoki6:20220123180809j:image

f:id:hayaoki6:20220123180818j:image

f:id:hayaoki6:20220123180811j:image

f:id:hayaoki6:20220123180815j:image




 

 

⑤宝珠(ほうじゅ)

 タマネギ型の宝の玉。上の方から火焔(かえん)が出ている「火焔宝珠」もあります。


f:id:hayaoki6:20220123180958j:image

f:id:hayaoki6:20220123181002j:image

f:id:hayaoki6:20220123180952j:image

f:id:hayaoki6:20220123180955j:image

f:id:hayaoki6:20220123181005j:image

f:id:hayaoki6:20220123181008j:image



 

⑥丁子(ちょうじ)

 香辛料のクローブです。

 宝尽くしつながりか、先端を正面から見ると七宝になっています。七宝の四隅に○が付いていて、横から見ると、○が三つ付いているように見えます。

交差しているタイプもあります。


f:id:hayaoki6:20220123181128j:image

f:id:hayaoki6:20220123181139j:image

f:id:hayaoki6:20220123181131j:image

f:id:hayaoki6:20220123181133j:image

f:id:hayaoki6:20220123181145j:image

f:id:hayaoki6:20220123181137j:image

f:id:hayaoki6:20220123181142j:image



 

 

⑦分銅(ふんどう)

 重さを量る分銅。

 いわゆる分銅型がポピュラーですが、両端が花びらのように波打っていたり、帯を巻いているものもあります。

 へこんだ側の両端に、○が付いているものもあります。


f:id:hayaoki6:20220123181319j:image

f:id:hayaoki6:20220123181321j:image

f:id:hayaoki6:20220123181313j:image

f:id:hayaoki6:20220123181325j:image

f:id:hayaoki6:20220123181316j:image

f:id:hayaoki6:20220123181351j:image

f:id:hayaoki6:20220123181354j:image



 

 

⑧小槌(こづち)

 いわゆる打ち出の小づち。

 ずんぐりむっくりで柄は小さく、紐が付いていたりします。


f:id:hayaoki6:20220123181516j:image

f:id:hayaoki6:20220123181511j:image

f:id:hayaoki6:20220123181509j:image

f:id:hayaoki6:20220123181506j:image

f:id:hayaoki6:20220123181514j:image



 

 

 その他の宝物

 

⑨鍵(かぎ)

 宝物をしまう蔵の鍵。宝鑰(ほうやく)とも。

 木の柄に、金属の鍵が付いています。鍵の先端は、カクカクした渦巻きになっています。


f:id:hayaoki6:20220123181705j:image

f:id:hayaoki6:20220123181707j:image

f:id:hayaoki6:20220123181710j:image



 

 

⑩宝袋(たからぶくろ)

 宝物を入れる袋。金嚢(きんのう)とも。

    たいがい、中身がいっぱい入っています。


f:id:hayaoki6:20220123182314j:image

f:id:hayaoki6:20220123182317j:image



 

⑪熨斗(のし)

    いわゆるのし袋ののし。

    ひも状の物が束ねて描かれます。

f:id:hayaoki6:20220123181913j:image

 

 

 

『小吉の女房2』 第三回「お信と白鬚様の庭」感想&『夢酔独言』的解説

土曜時代ドラマ『小吉の女房二2』の地上波放送が始まったので、BS放送当時に描いた感想&『夢酔独言』的解説記事を公開し直します。内容は変わってないよ!ネタバレがおおいにあるので、ドラマを観た後で読んでくださいね。

 第三回「お信と白鬚様の庭」は、1月22日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!

 

 

 

勝海舟の父・小吉お信を主人公にしたドラマ『小吉の女房2』。この記事では、『小吉の女房2』の感想と、ドラマの『夢酔独言』および勝小吉、あるは勝海舟に関わる部分の解説をお送りします。

 なお、ドラマ終了後すぐさま記事を作成しているので、劇中のセリフ等はおおむねうろ覚えです。

ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

・第三回「お信と白鬚様の庭」あらすじ

 

 

お信(沢口靖子)と小吉(古田新太)を影ながら見守ってきた幕府の実力者・中野碩翁(里見浩太朗)だったが、政争の果てに旗色が悪くなっていた。そんな頃、勝家では小吉が珍しく体調を壊し、お信は心を痛めていた。碩翁は町中でお信とばったり出会い、小吉の平癒祈願のお参りや、自宅の豪奢な庭の見物にお信を連れ回す。碩翁のことを「植木屋のご隠居」と思い込んでいる無邪気なお信の姿に、碩翁は心癒やされていく。

※NHKホームページより引用

 

 

 

・感想

 

・お信、発想がファンシー過ぎる

 

・石川太郎左衛門さんが意外とかわいかった

 

・ 虎の門への引っ越しのくだりは、思い出名場面集の効果もあってかしんみりしちゃう

 

 

 

・『夢酔独言』的解説

 

 天保十二年(西暦1841)本所お信沢口靖子さん)38歳小吉古田新太さん)40歳麟太郎鈴木福さん)17歳お順4歳です。

 

 冒頭、唐辛子売りから一味だか七味を買うお順。この唐辛子売り、大きな唐辛子のハリボテを持っていますが、これは当時実際にあったスタイルのようです。

 この唐辛子売り、三大「自分が時代劇を作る時ついつい出したくなる行商人」のひとつだったりします(あとの二つは、シャボン玉売りと冷や水売りです)。※はやおき調べ

 

  小吉は脚気(かっけ、江戸わずらいとも。脱穀した白米を主食とする江戸特有の病であったため)で、ほぼ寝たきり生活。ビタミンB1不足で起こる脚気には蕎麦がいいと、さっきお順が買って来た唐辛子をかけて蕎麦をいただきます。

 実際の小吉も早くから脚気をわずらっていて、症状が良くなったり悪化したりだったようですが、『夢酔独言』では、今の入江町に引っ越す前、29歳の時点で、脚気にて久しくわずらいていた故、あるくことができぬ」と書いています。また、ひどい時には、「身体がむくみて寝返りもできぬようになった」とあります。

 

 一方、島田虎之助さんの道場では、島田さんと麟太郎が剣術の稽古。稽古終了後、身体を拭くついでにアヘン戦争天保十一年、西暦1840~。清朝のアヘン禁輸措置からイギリスと清国との間に起こった戦争)などの時勢話をします。

 そんな国際情勢に、「私のなすべきことは何なのか…」と思い悩む青年・麟太郎。まるで将来外交を手掛けるかのような発言だ…!

 

  一方、落首(らくしゅ。風刺は批判の意をこめた戯歌)で「本荘の石は墓所でむだになり」とうたわれた中野碩翁里見浩太朗さん)さん。(その間に政治情勢の難しい話をしてたけどもそれは置いといて)散策に出掛けます。

 出掛けた先の三囲稲荷(みめくりいなり)の植木市で牡丹の鉢植えを吟味していたお信と出会い、牡丹をめちゃくちゃ値切って買ってから、二人でしばし「ぶらり本所の旅」を楽しみます。

 「牛の御前(うしのごぜん)」という、自分の体の不調部分を撫でるとご利益がある系の牛像をお参りするお信。小吉の脚気が治るようにと、膝を撫でます。めちゃくちゃ健気

 牛像を撫でると「モォ~」と声が。

 「鳴きましたね!」と目を輝かせるお信ですが、陰からいたずら小僧が登場し、走り去ります。「今の子は牛の御前様の使い…」とお信。解釈がファンシーかよ。ちなみにお信、今一緒に歩いている中野碩翁さんのことも、白鬚神社の精だと思っています

 

 それからお茶屋さんで桜餅を注文しますが…

お信「旦那様に持って帰ります」

碩翁「私は甘いものは苦手で…」

 何しに来たんだ。お信はめちゃくちゃ健気

 

 そこへ追っ手家来がやって来て、幕府の偉い人だとバレそうになる碩翁さん、その場を立ち去ります。

 

 そんでもって自宅の庭園を案内、麝香ナデシコカーネーション)を紹介します。お信、碩翁さんを白鬚神社の精から、植木屋のご隠居ジョブチェンジさせます。

 

 

 

 今回二人が巡った名所は、はやおきは徳島県民だもんで初耳だったのですが、調べると手元の江戸切絵図に名前が載っていました。

f:id:hayaoki6:20210416221052j:image

 左手にあるのが三囲稲荷、右手にあるのが牛の御前です。中野碩翁さんゆかりの白鬚神社もありますね。

 

 

 

  お信が家で牡丹に水をあげていると、麟太郎が帰宅。先ほどの散策の一部始終を、麟太郎へ楽しげに語ります。

 それを聞いていた麟太郎、「世の中は大きく変わろうとしている。私は何をすればよいのかとかんがえていましたが…母上が笑って暮らせるかどうかを物差しにしようと思います」と言います。麟太郎、めちゃくちゃいい子。そして楽しげにしているだけで麟太郎に今後の物差しを決めさせちゃうお信がすごいぜ。

 

 

 

 ところが、そう和やかな日々は続きません。石川太郎左衛門高橋和也さん)が、小吉が無断で摂津まで行った件を蒸し返して、虎の門押し込め(屏居させて出入りを禁ずる刑罰)となってしまいます。『夢酔独言』では、小吉の身から出た錆みたいに書かれているので何とも思いませんでした(ドラマでは省かれていましたが、この頃の小吉はかなり本所で幅を利かせていて、何もしなくても盆暮五節句にあっちこっちから上納金みたいなのが懐に入る状態だったのです。そりゃ取り締まられるわ…)が、『小吉の女房2』では、石川太郎左衛門のたくらみのせいで長年慣れ親しんだ本所から離れるというのを、シーズン1からの振り返り名場面集とともに見せられたので、しんみりしてしまいました。

 

 

 

f:id:hayaoki6:20210416225208j:image

    漫画だとこのへんです。

 

 

 

 虎の門へ押し込めの話は、『氷川清話』勝海舟が語っています。

 かつて親父が、水野(忠邦の天保の改革)のために罰せられて、同役の者へ御預けになった時には、おれの家をわずか四両二分(約40万円)に売り払ったよ。それでも道具屋は、殿様だからこれだけに買うのだなどと、恩がましく言ったが、ずいぶんひどいではないか。その同役の家というのは、たった二間だったが、その狭いところで同居したこともあったよ。

※『氷川清話』より、はやおきによる現代仮名遣いで引用

 

 

 

 第四回「麟太郎、ナポレオンと出会う」は、4月23日(金)20:00~、BSプレミアムにて放送です!

 

あらすじはこちら↓ 

www.nhk.jp

 

 

 

 麟太郎の蘭学の師匠の一人、都甲斧太郎先生が登場します。

 都甲先生の登場するお話はこちら↓

 

musuidokugen.hatenablog.com

 

 …永井青崖先生もついでに登場しないかな…。

 麟太郎の未来の妻・さんも登場するみたいですが、どんな流れで麟太郎と仲を深めるのか?

 そして、小吉の出番もちょっとはあるのか!?

 お楽しみに! 

 

 

 

 追記:第四回「麟太郎、ナポレオンと出会う」は、1月29日(土)18:05~、NHK総合にて放送です!

あらすじはこちら↓

(4)「麟太郎、ナポレオンと出会う」 - 小吉の女房2 - NHK

 

 

 

『小吉の女房2』 第二回「小吉、腹を切る?」 感想&『夢酔独言』的解説

 土曜時代ドラマ『小吉の女房二2』の地上波放送が始まったので、BS放送当時に描いた感想&『夢酔独言』的解説記事を公開し直します。内容は変わってないよ!ネタバレがおおいにあるので、ドラマを観た後で読んでくださいね。

 第二回「小吉、腹を切る?」は、1月15日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!

 

 

 

 勝海舟の父・小吉お信が主人公のドラマ『小吉の女房2』

 この記事では、ドラマの感想と、勝小吉自伝『夢酔独言』の内容と照らし合わせた解説をしていきます。ネタバレあり。なお、劇中セリフはおおむねうろ覚えです。

 あと、第一回ではすっかり失念していた、メインキャストの皆さんの名前も入れました。

 

 

 

 

 

 

・第二回「小吉、腹を切る?」あらすじ

 

勝小吉と女房のお信は、大身旗本・岡野孫一郎と祖母の多賀を助けるために、騒動に巻き込まれる。悪党の用人・丈助に謀られ大金が必要になり、小吉は岡野家の知行所である摂津の農村まで出向いて、金を作ろうと算段するが、したたかな百姓たちを相手に大苦戦。一方、江戸で留守を守るお信と麟太郎は、岡野家を襲うならず者たちと対決することに…。そして奔放な小吉を見守ってきた兄・彦四郎には死期が迫っていた。

※NHKホームページより引用

 

 

 

・感想

 

 ・小吉メイン回。お信はすりこぎ棒を持って戦う

 

・斎藤監物さんが再登場

 

・お多賀さんが茶道具ずっと持ってるけど最終的にどうするんだろ…

 

 

 

・『夢酔独言』的解説

 

  舞台は前回の続き、天保十年(西暦1839)、江戸・本所お信沢口靖子さん)36歳、小吉古田新太さん)38歳、麟太郎鈴木福さん・後の勝海舟)17歳、麟太郎の妹・お順4歳です。ちなみに実際には順の上に長女・はながいるのですが、ドラマでは省略されています。

 

 第二話は、岡野家(地主さんで、小吉一家は岡野家の敷地内に住んでいます)から始まります。

  控えの帳面を渡せ(by小吉)渡さない(by大川丈助)で問答する二人。

 

※前回までのあらすじ…

 地主・岡野家のまかない用人(武家の庶務・会計係)として雇われた大川丈助(マキタスポーツさん)。岡野家のために立て替えた金が339両あると言って、返金を要求してきた。しかし岡野家にはそんな大金を用意する余裕はない。339両とか言ってるけどつけかけ(水増し計算)じゃないの~?と周囲は疑うが、証拠の帳面を丈助は渡さない(岡野家のぶんの帳面もあったけどどっか行った)。まごまごしているうちに、丈助がご老中に直訴したりして大事に…

 

  岡野家当主の孫一郎中村靖日さん)は、「一文もやらずに片付けたい」と言いますが、小吉は「物騒な手段になる」と返します。

 『夢酔独言』では、多分このあたり。

 

f:id:hayaoki6:20210409213509j:image

 

 セリフはほぼ原作通りです。『夢酔独言』では、小吉が岡野の親戚の皆さんとのやりとりで、「金をやらぬようにする(方)法は、今皆様へお話し申すと、すぐに目でもお回しなさるから言いませぬ(原作よりはやおきによる現代仮名遣いで引用)と答えています。

 

 何やかんやで小吉に一件を任せることになった岡野家。「いったん任されたからには口出し無用」と(何か質問しようとしたけど、さっそく口出し無用を適応されて答えてもらえない孫一郎さん)、小吉、解決に向けて動き出します。

  この口出し無用は、『夢酔独言』ではもっと堅固なあつかいになっていて、その証文や書付を孫一郎さんに書かせていました。また、小吉の息子の勝海舟も、問題を請け負う際は、「一切を任せて口出ししない」のを条件としていました。

 

 舎弟の巾着切りの銀次に、桶屋古着屋からいろいろと調達させる小吉。岡野家の知行所(幕府から割り与えられた領地的な土地)という、摂津兵庫県)の御願塚(ごがんづか)村へ向かいます。※武士の無断外泊は禁じられています。

  摂津行きのメンバーは、小吉銀次、それから品用師(詐欺師。『小吉の女房』第五回登場)の斎藤監物さんです。ならず者しかいねえ…。

 『夢酔独言』では、一応武士の皆さんで行きます。

 

 出発の場になぜかジャストタイミングで現れ、「一緒に行きます!」と元気よく申し出る島田虎之助さん(麟太郎の剣術の師匠。第一回で小吉にムリヤリ吉原へ連れて行かれた)。そこは小吉、「麟太郎をよろしく頼む」と言って、3人で旅立ちます。まあ、許可取ってないと行っちゃダメですし…。

 

 

 

 数日後、岡野家できらず飯(米におからを混ぜたもの)を炊くお信(なぜ岡野家に居るかは気にしない)。確か『小吉の女房』シーズン1でも登場しましたが、きらず飯は『夢酔独言』にもでてくる節約メニューです(米一升におから2,3升の配合だったそうです)。

 

 そこへ絵に描いたようなガラの悪い3人組が登場。ガラ悪く借金の取り立てをしてきます。おからを擂っていたすりこぎ棒で応戦するお信…しかし多勢に無勢、岡野家のご隠居お多賀さん松原智恵子さん)は大川丈助の押し込め(出入り禁止の刑)部屋の見張り番をしていた2人に助けを求めますが、「見張りが仕事なんで…」と役に立ちません2人のうちどっちかが行ったらいいじゃん

 そこへジャストタイミングで麟太郎島田さんが登場。3人組をシメます『夢酔独言』でも「息子が柔術の相弟子に島田虎之助」と紹介されている島田さん、柔術もデキる人なのです!退散する3人組、お信がすりこぎ棒を持って戦おうとしたことについて、皆でひとしきりホンワカします。

 

 

 

 一方、摂津御願塚村。小吉一行は、代官陣屋(だいかんじんや。代官の居る所)に泊まることになります。

 この時、小吉は改名の届け出が受理されて「夢酔(むすい)」となっており、表向きは「岡野の家来・左衛門太郎」として摂津へ行きましたが、皆「夢酔様」と呼んでいます。ともあれややこしいので、ドラマでは「小吉」で統一されています。

 

 村の代官山田新右衛門さんに、400両ほど要求する小吉。ちなみに『夢酔独言』換算では、1両は訳96000円、×400=3840万円もの大金です。

 「不作続きで生活が苦しくて…」と訴える名主の皆さん(宇市さんと源右衛門さんという役名でしたが、『夢酔独言』にも、実際この2人が登場します)。

 しかし村を見てみると、子供が農作業を手伝うことなく昼間から遊んでいたり、名主たちは俳諧を楽しんでいたりと、暮らしぶりは楽そうです。楽だからって、3800万円も出したくないですけども。

 ここの場面で子供たちが遊んでいるのは「ことろことろ」で、鬼ごっこの変形ヴァージョンのようなものです。

 

 

 

 一方江戸では、お信男谷家(小吉の実家)に呼び出され、「武士が無届けでどっか行っちゃダメ!勝家ばかりか男谷家も偉い人からにらまれるじゃん(意訳)!麟太郎が小吉みたいになったら困る!」と彦四郎さん(升毅さん・小吉の兄)やお遊さん(高橋ひとみさん・兄嫁)から叱られます。「私は麟太郎には旦那様(小吉)のように人を助ける男になってもらいたいと思います」と言い返すお信。まるでそうなることを知っているかのようだ…。

 

 片や忘れられがちだけど一応毎回登場している石川太郎左衛門さん(高橋和也さん・小吉の子供時代の剣術道場の先輩。小吉をからかってたら木刀でボコボコに殴られた)。小吉が無断で摂津に行くことを上司にチクり、「小吉のやつ、岡野家ともども地獄行きだ」とデカめのひとり言をつぶやきます。

 

 

 

 摂津の村では、小吉が村の子供たちに剣術の稽古をつけます。しかし、一向に400両が出てくる気配はなく…。

 小吉は世話になってるお礼とかで、村人一同を集めた宴会を催します。「いよいよあきらめたか」と喜ぶ代官たちでしたが…。

 ここで、サブタイトルの「小吉、腹を切る?」の意味が分かるわけですが(中略)、結果400両は手に入り、小吉は江戸へ帰りました。小吉、生きてます。 

 

 この間約1ヶ月。具体的には、11月9日江戸を立ち、12月9日に帰りました。小吉と大川丈助との話し合いで、12月19日には339両返す約束になっていたので、けっこうギリギリの日程でした。

 『夢酔独言』では、金を出すことを拒む百姓が竹槍を持って押しかけたり、小吉が見ず知らずの大坂の奉行の知り合いのフリをして贈り物を自作自演したり、温泉入りに行ったり、たまに大坂へ行って遊んだり、雨乞いしたりしましたが、それらのエピソードは漫画でお楽しみください。

 

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

 

  無事に大川丈助へ339両返し、もろもろの借金を返した(ガラの悪い3人組の件も解決したようです)あとに残った50両を勝家にお礼としてくれるというお多賀さん。しかし「知行所の村が岡野様のためといってくれた金だから」と受け取らない小吉。

 受け取る受け取らないの問答をした末、「麟太郎の着物に」と木綿一反を提案するお信。その反物代はどこから出るんだとも思いますが、現金がダメなら物でお礼をもらおうという発想が、お信もしっかりしています。 

 

 『夢酔独言』では、江戸に帰った翌日お婆様が亡くなったとあります。

 

 それで万事解決…というわけにもいかず、小吉は無断で摂津へ行った罰で他行留め(たぎょうどめ…外出禁止)の罰を受けます。

 

 それから石川太郎左衛門さんがまたよからぬ企みをしかけますが置いといて、翌天保十一年(西暦1840)夏、小吉の他行留めが解かれますが、間もなく彦四郎さんが倒れ、亡くなります。

 ドラマでは兄の死に際を看取ることができた小吉ですが、実際は2月から9月まで他行留めは続いており、彦四郎さんが亡くなったのは6月でした。

 

 

 

 第三回「お信と白髭様の庭」は、4月16日(金)20:00~BSプレミアムにて放送です!

 

あらすじはこちら↓

www.nhk.jp

 

  『夢酔独言』で小吉が活躍するくだりはだいたい終わってしまったので、来週から解説することがなくなりそうですが…そのぶん、お信のかわいさを堪能できそうですね!

 お楽しみに!

 

 

 

『小吉の女房2』 第一回「勝家、地主から追い立てをくらう」2022年1月8日地上波再放送です!

 ドラマ『小吉の女房』2の地上波再放送が、開始されます。

 第一回は、2022年1月8日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!

 詳しい情報はこちら↓

(1)「勝家、地主から追い立てをくらう」 - 小吉の女房2 - NHK

 この記事は初回放送時の感想&解説です。ドラマを観た後で読んでね!

 

 

 

 勝海舟の父・小吉の妻のお信が主人公のドラマ『小吉の女房』。その続編『小吉の女房2』が、2021年4月2日から、BSプレミアムにて全7回で放送開始となりました。

 この記事では、『小吉の女房2』の紹介と感想、エピソードに登場する『夢酔独言』要素について解説します。前シーズンでは解説の勢い余ってだいぶネタバラシをしてしまった気がするので、今回はつつましく解説したいと思います(ネタバレあり)。なお、劇中の皆さんのセリフは、おおむねうろ覚えなのでご了承ください。

 

 

 

 

 

 

・第一回「勝家、地主から追い立てをくらう」あらすじ

 

 

勝家の女房・お信(沢口靖子)は、お金の苦労をしながらも、無邪気で笑顔を絶やさない。夫の小吉(古田新太)は、生来の無鉄砲者。両親を見守るのが、やがて「勝海舟」として江戸の人々を救うことになる息子の麟太郎(鈴木福)。お信と小吉は、地主・岡野家のトラブルに巻き込まれる。悪党・丈助(マキタスポーツ)に騙され当主(中村靖日)と祖母(松原智恵子)は窮地に立たされる。小吉が丈助と対決するが一筋縄では行かず…。

NHKホームページより引用

 

 

 

・感想

 

・お信がかわいい(毎回言ってる)

 

・お順(麟太郎の妹)がやたらめったら冴えてる

 

・島田虎之助さんが出てくる。お婆様も回想で出てくる

 

・ナメクジ(『小吉の女房』のマスコット軟体生物)も出てくる

 

・小吉は終始縁側で寝っ転がって鼻毛抜いてるだけ

 

 

 

・『夢酔独言』的解説

 

 第一話の舞台は、天保十年(1839年)の江戸・本所

 小吉は38歳、37歳で隠居して1年が経ちました。お信35歳麟太郎(後の勝海舟)は17歳、麟太郎の妹・は麟太郎より13歳年下ですから、4歳ぐらいです。

 恒例のお信「家内安全、無病息災」とお祈りし、小吉麟太郎ラジオ体操をする(この時代にラジオは無い)シーンから始まります。長女のは仏壇に手を合わせ…その様子を見て、小吉はお婆様(前年亡くなっている)を思い出してギクッとします。

 相変わらずの貧乏所帯の勝家、朝食に使う味噌がありません。

 「あれ、ない」とつぶやくお信、無くなる前に買っとけと思いますが、かわいいから許す。

 一家揃っての朝食のくだりで、麟太郎の剣術の師匠・島田虎之助さんの話題が出ます。小吉が麟太郎について「剣の腕はからっきし」とか言っていたので、麟太郎は剣道は弱い設定なんですかね?確かに、実際の麟太郎が剣術を始めたのは小吉が隠居してからで(ドラマ内時間で1年前)、それも小吉が島田さんに頼んでのことでした。

 ひとしきり島田虎之助さんについて説明する麟太郎(男谷道場に弟子入りして1年で免許皆伝で、浅草新堀に道場を開いた)、「強そうな名前ねぇ」と合いの手を入れるお信(かわいい)

 島田さんに会いに行きたいと言う小吉、一方お信は、地主の岡野様を訪ねろと言います。

 地主の岡野様と言えば、マンガ『夢酔独言』ではおなじみ、本所入江町で小吉が地面を借りている家です。

f:id:hayaoki6:20210402212855j:image

 地図に名前もあるよ

 

お信・小吉・麟太郎三つ巴の「行く・行かない」問答の末、ダチョウ俱楽部方式でお信が岡野家へ行くことになります。

 

 一方小吉は、舎弟の巾着切りの銀次と歩きながら、岡野家について解説します。すると、横文字が書かれた本を熱心に読んでいるメガネの人とぶつかります。彼は花井虎一といって、林町に住んでいて、何やら蘭語オランダ語を勉強しているようです。「何だあの横文字は…」といぶかる銀次に、「あれは蘭書だ」とひとしきり解説する小吉。意外と博識です。

 この花井って人が、後に麟太郎と絡んでくるのかな…?

 

 一方お信は、勝家にて岡野家のご隠居・お多賀さんとおしゃべり。このお多賀さんもかわいいです。この人が先代の孫一郎さんの妻だとすると、『夢酔独言』では、小吉に「孫一郎を隠居させてくれ」と頼んだお前様と同一人物のようです。

 ドラマでここに至るまでの間に、『夢酔独言』では引っ越したての小吉が先代の孫一郎さんの悪評を知らないまま金の工面をしたり、そのせいで勝家が貧乏になったり「大迷惑をした」by小吉)、お前様に頼まれて孫一郎さんを隠居させたり、後継ぎの孫一郎さんの家督相続の時には江戸城まで付き添ってあげたり、(新)孫一郎さんのお嫁の世話をしてやったり(これはドラマで言っていました)、その他何やらかんやらしてあげています。

 

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

 

 先代の孫一郎に似て、現当主の(新)孫一郎も酒乱でぐうたらしていて困ると語るお多賀さん。「親の悪い手本を見て子はまっすぐ育つというけれど…」小吉が『夢酔独言』を書く伏線かな?

 

 ここでお多賀さんとお信による「小普請金(こぶしんきん)」の解説があります。はやおきは『夢酔独言』に書いてないもんで、「小普請金」のことは分からないのですが…。

 小普請金は、小普請組に所属する非役の旗本および御家人が、100石につき2両納めなければいけない金で、1500石の岡野家は30両、41俵の勝家は2分(30両の60分の1)ということでした。岡野家大変…!

 

 

  

 一方その頃、小吉は先ほど行った道具市であつらえた着物を着て、浅草新堀の島田道場を訪ねます。ちょっと奇抜なファッションですが、このときのいでたちについては、『夢酔独言』で具体的な記述があります。

 

縮緬(赤い絹織物)の襦袢にしゃれた衣類を着て、短か羽織で拍子木の木刀を一本さして、会いに行ったらば、

※はやおきによる現代仮名遣いで引用

 

 自分の父親が、派手な格好をして剣術の師匠に会いに行くとか嫌過ぎますが…「酒は飲まねえのか」と聞く小吉、「修行中なのでやめています」との島田さんに、「江戸で修行をするのにそんな狭量ではやっていけない」と、ムリヤリ連れ出します。

  このあたりのやりとりはこちら。

musuidokugen.hatenablog.com

 

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

 

 片や本所勝家では、お信お多賀さんが話しているところへ、岡野家用人(大名・旗本の家で、庶務・会計などにあたった職)の大川丈助がやって来ます。

 丈助を見て、「断りもなく人の家を覗いておりました。悪人です」と言う長女・めちゃくちゃ冴えています。その通りだ…!!

 

 夕方、麟太郎が勝家に帰宅すると、父・小吉によって多少不良に染まった島田虎之助先生が(ドラマでは吉原の昼営業へ行って帰ったとなっていますが、『夢酔独言』では、ガッツリ座敷で遊んで翌日帰りました)。

 『夢物語』という、モリソン号事件(天保八年、西暦1837に起きた事件。浦賀に対日通商を求めて渡来したアメリカ船モリソン号を、砲撃して追い返した。モリソン号には、遭難した日本の漁師も乗っていた)を批判する本について話題提供する島田先生。実際の島田先生も、後々麟太郎に蘭学を勧めることもあり(ネタバレ)、国際情勢に関心があるというのは自然な流れです。

 一方、お信は、モリソン号に乗っていた日本の漁師を気遣います。「早く家族に会えるといいのに…」その通りだ…!優しい…。

 

 『夢物語』については何やかんや裏があったりするのですが、そこはネタバレになるので置いといて、『夢酔独言』では小吉の子供時代に一回登場して終わりなのに『小吉の女房』ではレギュラーキャラの石川太郎左衛門さんがチラッと顔出しになります。

 あと、高野長英さんはまた登場するんですかね?

 そんな感じの蛮社の獄でした(雑なまとめ)。

 

 

 

 そんなこんなしているうちに、岡野家では当主の孫一郎さんが用人の大川丈助の言いなりで、丈助に30両もの大金(2回目)を渡してしまい、お多賀さんは大事な茶道具を、道具市で売り払ってほしいとお信に頼みに来る始末…。

  

 いよいよ仕方なく岡野家へ向かう小吉。岡野家、めちゃくちゃデカいです。お城みたい。で、中では当主の孫一郎さんが、丁半博打に興じている(当時、旗本の間で博打が大流行していたのを反映させた場面と思われます)…。物理的にひっくり返して博打メンバーを追い出すと、孫一郎さんを説教する小吉。しかしそこには丈助も同席し、売り言葉に買い言葉、いつの間にかお信も来ていて「まあひどい」、同じ敷地に住んでるもんね…で、「出て行け!」となります。

 

 その後、何やかんやあって丈助もいよいよ追い出されそうになるのですが、「その前に岡野家のもろもろの支払いの立て替え金339両を返してもらいます」と言い出す丈助。当主の孫一郎さんに、丈助に立て替えてもらった記憶はないのですが、どうやら、丈助はつけかけ(水増し計算)しているようす。

 二つあったはずの控え帳は、丈助によって行方不明にされてしまいました。

 

マンガ『夢酔独言』ではこんな感じ↓

f:id:hayaoki6:20210402230450j:image
f:id:hayaoki6:20210402230453j:image

 

 

 

 「親類が何とかするだろう」と、縁側で寝っ転がって鼻毛を抜く小吉でしたが…。 

 

 そうこうしているうちに、丈助がご老中に駕籠訴(かごそ)!

 

f:id:hayaoki6:20210402230706j:image
f:id:hayaoki6:20210402230714j:image
f:id:hayaoki6:20210402230711j:image

 

 その後も、こんな感じで↓ずっと大変な岡野家。  

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

 

 岡野家に何かあったら、勝家もヤバい(by小吉の兄彦四郎さん&兄嫁のおさん)とのことで、岡野家騒動に首を突っ込むのをためらい、今日も今日とて縁側で寝っ転がって鼻毛を抜く小吉でしたが…。

 お信がハッパをかけて(もまだグズグズしてたけど何やかんやあって)、小吉は丈助の元へ向かいます。

 

 

 

 大川丈助さん、ドラマでは悪者ってことになってましたが、『夢酔独言』を読んだ限りでは、そんなに悪人という印象でもありませんでした。『夢酔独言』に登場する人は、だいたい人から金を騙し取るので…。それを解決する小吉の自伝ですからそういう傾向になってしまうのかもしれませんが、その小吉も、けっこう口から出まかせで解決したりします。

 

 

 

 『小吉の女房2』第二回「小吉、腹を切る?」は、4月9日(金)20:00~、BSプレミアムにて放送です!

 

 小吉は立て替え金を用立てるため、摂津へ旅立ちます。

 一方、留守を守るお信は…。

 

 

 

 マンガ『夢酔独言』を読んで予習してね!全然内容違うかもしれないけども!

 

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

musuidokugen.hatenablog.com

 

 

 

追記:

第二回の地上波放送は、2022年1月15日土曜日18:05~、NHK総合にて放送です!

 

 

 

『童謡妙々車』の袋

    はやおきが所有する絵草紙『童謡妙々車』。

    内容はさっぱり読めないのですが、その精密な作画と「車」テーマで統一された口絵がとても好きです。

    一編が上下巻に分かれていて、2~4冊がまとめて綴じ合わせられています。その表紙に、発売当時本が入れられていたであろう袋も一緒に綴じられているのですが(上下巻一緒に販売されていたのか、袋に上下の記載はありません)、その袋の図柄もまた、「車」がテーマになっているのです。

今回は、『童謡妙々車』の袋の図柄について紹介・解説します。

    どの袋にも、全体に布目摺り(実際に布を押し当てて、織物のような質感を加える技法。インクは使わない)が施されています。

 

f:id:hayaoki6:20211225130410j:image

初編

    初編は車に関係ない図柄。

    鶴と松竹梅で、めでたいモチーフ尽くしです。


f:id:hayaoki6:20211225130424j:image

三編

    玩具の風車。


f:id:hayaoki6:20211225130415j:image

四編

    お祭りの山車のような…。

    車の上に載せられている装置には干支を表す漢字が12字書かれており、中に針らしいものが見えます。方位磁石か、時計を表したもののようです。手回しレバーが付けられています。

    山に蔦とか、「紅英堂」は、版元を表しています。


f:id:hayaoki6:20211225130355j:image

五編

    汐汲みの桶が二つ、台車に載せられています。

調べてみると、能『松風』に登場する小道具のようです。


f:id:hayaoki6:20211225130413j:image

七編

    鯉のぼりの吹き流しのようですが、車はどこに…緑の丸がそうかな。


f:id:hayaoki6:20211225130401j:image

編不明(九編)

    どう見てもハムスターの飼育セットですが、そんな訳ないので何だろう。


f:id:hayaoki6:20211225130407j:image

十編

花籠を載せた車。「花車(はなぐるま)」と称されるモチーフです。


f:id:hayaoki6:20211225130418j:image

十一編

    手回し扇風機。


f:id:hayaoki6:20211225130358j:image

十二編

    張り子の桜と、水流を表現するための装置。

    歌舞伎『妹背山婦女庭訓』に、同じような装置が登場します。 

    張り子や装置と分かるように、裏側の構造を見せて書いているのが親切です。


f:id:hayaoki6:20211225130404j:image

十三編

    玩具の車。鰹かな。


f:id:hayaoki6:20211225130421j:image

十四編

    蒸気船。

    この袋に入っていたであろう十四編下の巻末予告に文久二年(西暦1862)とあるので、その頃の世相を反映したものと思われます。

    船を囲んでいる枠も、西洋風。

 

 

 

2021年12月に描いた絵

 2021年12月に描いた絵です。

 Inktoberの絵の続きを描きたかった過去もありましたが、挫けました。

 新しい絵が、上に来ます。

 

 

 

f:id:hayaoki6:20211221214234j:image

 来年は寅年ということで、島田虎之助さんです。

 マンガ『夢酔独言』の島田さんは、名前に虎が付いているので、虎をイメージしたビジュアルになっています。

 ところで、小吉の諱(いみな)は「惟寅」なので、2021年は勝小吉の年ですね。生誕120周年だし。

 

 


f:id:hayaoki6:20211221214237j:image

 試しにデジタルでトーン貼りしたマンガ『夢酔独言』の扉絵です。タイトルロゴも、デジタルで塗りつぶしました。

 線で囲った内側にしかトーンが貼れなくて、グギーとなりながら貼りました。着物の模様は、後から描いた方がいいかもしれない。